幻のプレミア切手「天安門光芒放射」も!中国切手「北京の名勝」の全種解説と市場価値
幻のデザインが印刷された、「天安門光芒放射」切手をご存知でしょうか?
1956年、建国間もない中華人民共和国が、国の威信をかけて発行した「北京の名勝切手」。切手には、北京の荘厳な建造物だけでなく、若き国家の情熱が刻み込まれています。
さらに、その切手の中には、急きょ発行停止となった幻のデザイン「天安門光芒放射」が存在。現在では、コレクター垂涎のプレミア切手として、ごくわずかな枚数のみが現存しています。
当記事では、「北京の名勝切手」全種を詳細に解説し、査定・買取に向けた市場価値についてもご紹介します。
お手持ちの切手アルバムの中に、もしかしたら「プレミア切手」が眠っているかもしれません。ぜひ、記事内容と照らし合わせながら、貴重な切手を見つけるきっかけにしてください。
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目次
「北京の名勝切手」とは?
悠久の歴史と豊かな文化が息づく中国の首都、北京。数々の歴史的建造物や美しい風景で彩られたこの都市は、国内外から多くの観光客を魅了し続けています。
1956年、中華人民共和国は、そのような北京の魅力を世界に発信するため、「北京の名勝」をテーマにした特別な切手セットを発行しました。
この切手セットは、「頤和園」「北海」「天安門」「天壇」「太和殿」という、北京を代表する5つの名勝地を描いた5枚の切手で構成されています。
それぞれの切手は、その場所が持つ美しさや歴史的意義を鮮やかに表現しており、北京の魅力を余すところなく伝えています。
発行当時、中国は建国から間もない時期であり、国家としてのアイデンティティを確立することが急務でした。この切手セットは、北京が中国の文化と歴史の中心であることを国内外に示し、国民の誇りを高める重要な役割を担っていたのです。
また、この切手セットは、北京が誇る豊かな文化遺産を保護し、その価値を再認識するきっかけにもなりました。
発行にあたっては、一部の切手に印刷上の問題が生じるなど、さまざまな困難を乗り越えて世に送り出された「北京の名勝切手」。現在では、その歴史的背景や芸術性の高さから、切手コレクターや愛好家の間で非常に高い評価を受けています。
「北京の名勝切手」の全デザインと特徴
「北京の名勝切手」のデザインは、中国のデザイナー「邵柏林」氏の手によるものです。
あの有名な「赤猿切手」も、邵柏林氏が「黄永玉氏と共同でデザインした」ことでも知られています。
各切手には、北京を代表する名勝地の風景が、その特徴や歴史的背景を踏まえ、細部まで丁寧に描かれているのが特徴です。
それぞれの切手は、まるで1枚の絵画のような美しさを誇り、見る者を北京の魅力的な世界へと誘います。
▼「北京の名勝切手」一覧
✔ 頤和園(額面4分、発行枚数800万枚)
✔ 北海(額面4分、発行枚数800万枚)
✔ 天安門(額面8分、発行枚数1,200万枚)
✔ 天壇(額面8分、発行枚数1,100万枚)
✔ 太和殿(額面8分、発行枚数1,100万枚)
これらの名勝地は、現在でも人気の観光スポットとして多くの人々に親しまれています。
切手を通して、その美しい風景や歴史に触れてみてはいかがでしょうか。
次は、各切手の詳細を一緒に見てみましょう。
頤和園(いわえん)
頤和園の切手は、北京の夏の避暑地として名高い「頤和園」の美しい風景を捉えています。
切手の中央付近に描かれているのは、万寿山の頂に堂々とそびえる八角形の塔「仏香閣」です。この仏香閣がアクセントになり、切手の存在感を際立たせています。手前には広大な「昆明湖」が広がり、湖面には小さな遊覧船が浮かび、穏やかな情景を演出しています。
桃色を基調とした色彩は、全体的に優雅で落ち着いた雰囲気を醸し出し、中国の伝統的な庭園美を見事に表現したデザインといえるでしょう。
北海
こちらは、北京の美しい皇家園林「北海公園」の魅力を余すところなく伝える切手です。
翠緑色を基調としたこの切手には、北海公園のシンボルともいえる「琼華島」に立つ「仏塔(白塔)」、そして湖面に優雅に架かる「永安橋(石橋)」が描かれています。
とくに印象的なのは、中央に大きく描かれた永安橋とその美しい影です。湖面に映る橋の姿は、見事な対称性を生み出し、静謐な湖畔の風景に奥行きを与えています。
橋の3つのアーチは、力強くも繊細な曲線を描いており、その先に見える「琼華島」の緑と白塔とのコントラストが、調和のとれた美しい景色を作り出しています。
天安門
北京の象徴であり、中国の顔ともいえる「天安門」を描いた切手です。
橙赤色を基調としたこの切手の中央に描かれているのは、威風堂々とした天安門の楼閣です。その背後には、朝日が昇る様子が描かれています。空は明るく染まり、天安門の城楼と、その前に広がる雄大な長安街の景色が、新たな時代の幕開けを予感させるようです。
天安門前には、行き交う人々や車が描かれ、活気に満ちた様子が表現されています。天安門の堂々たる姿が、見る者に強い印象を残すデザインです。
天壇(てんだん)
藍色を基調とした天壇の切手は、北京に位置する「天壇祈年殿」の荘厳な姿を捉えています。
切手の中央には、三層の丸い屋根を持つ祈年殿が正面から描かれ、その特徴的な青い瓦屋根が空に向かって伸びる様子が印象的です。建物の周囲には白い雲がたなびき、神聖な雰囲気を醸し出しています。
中国の伝統的な建築美と、天壇が持つ宗教的な重要性を余すところなく表現したデザインです。
太和殿
北京の紫禁城(故宮博物院)の中心に位置し、皇帝の権威を象徴する「太和殿」を描いた切手です。
黄褐色を基調としたこの切手には、金色に輝く屋根と赤い柱が特徴的な太和殿が、威厳たっぷりに中央に描かれています。周囲には、ほかの宮殿建築も見え、複雑に重なり合う屋根の曲線が美しい調和を生み出しています。
中国皇帝の権力の象徴として、その壮大さと華麗さを余すところなく表現したデザインです。
▼中国切手「北京の名勝」の詳細
・発行日:1956年6月15日
・額面:4分、8分
・切手デザイン:全5種類
・発行枚数:800万枚~1,200万枚
・編号:特15
「天安門」には発行停止となった超プレミア切手がある
「天安門」をデザインした切手には、実は当初のデザインとは異なる、幻のプレミア切手が存在します。
当初のデザイン「天安門光芒放射」は、天安門の上空に昇る朝日と、そこから放射状に広がる力強い光が特徴的でした。しかし、その一方で、天安門の東側に渦巻く大きな黒雲が、陰鬱で重々しい雰囲気を醸し出していたのです。
このデザインは、一部の関係者から「天安門の偉大さや美しさを十分に表現していない」「原子爆弾の爆発を連想させ、和やかな雰囲気に欠ける」といった批判を受けました。
これらの批判を受け、中国郵電部は6月9日に、天安門切手の発行を一時中止。デザインの再検討を決定しました。最終的に、強烈な光を和らげ、暗い雲を白い雲に変更するなど、大幅な修正が加えられたのです。
このようにして、天安門の威厳と美しさをより適切に表現した切手が完成し、1957年2月20日に再発行されることになりました。
幻の「天安門光芒放射」がデザインされた切手は、現在ではコレクターの間で非常に高い価値を持つ「プレミア切手」となっています。
この出来事は、切手のデザインが単なる美しさだけでなく、政治的・文化的な意味合いも含めて慎重に検討されるべきであることを示す、貴重な事例といえるでしょう。
▼時系列でわかる「天安門光芒放射切手」の発行停止劇
・1956年6月9日:当初のデザイン「天安門光芒放射」の発行停止が決定
・1956年6月12日:全国に「天安門光芒放射」の回収・破棄を通達
・1956年6月15日:「北京の名勝」切手の一般発売(※「天安門光芒放射」を除く4種のみ)
・1957年2月20日:デザインを修正した「天安門」切手を再発行
ご覧の通り、発売直前の発行停止から回収通達まで、わずか数日という短い期間でした。
そのため、一部の郵便局では情報が伝達しきれず、回収前の「太天安門光芒放射」が誤って販売されてしまったのです。
販売枚数は、わずか約700枚。
流通枚数の少なさもあり、この「天安門光芒放射」は現在、「超プレミア切手」として扱われています。
過去には、中国国内のオークションで、1993年に使用済みのこの切手が、約4万1千元(当時のレートで約80万円)で落札されました。1997年には、未使用のこの切手が、なんと28万元(約409万円)で落札された記録も残っています。
市場に出回る枚数が極めて少ないため、「天安門光芒放射切手」を目にする機会はほとんどありません。
しかしながら、もしかすると読者様の切手アルバムの中に、この幻の「天安門光芒放射切手」が眠っているかもしれません。
お宝探しをするような感覚で、アルバムの中身を確認してみてはいかがでしょうか。
思わぬ「プレミア切手」を発見できるかもしれません。
「北京の名勝切手」の市場価値
「北京の名勝切手」は、中国切手の中でもコレクターから高い人気を誇り、額面以上の買取価格が期待できる切手セットです。
発行から60年以上が経過しているため、良好な状態で残っている切手は希少価値が高く、高額査定の可能性を秘めています。
とくに、幻の「天安門光芒放射」が描かれた切手は、その希少性からコレクター垂涎の的であり、驚くほどの高値で取引されることもあります。
また、発行枚数が比較的多い他の4種(頤和園・北海・天壇・太和殿)であっても、未使用で状態が良ければ、額面以上の価値がつくことも珍しくありません。
切手の価値は、保存状態や希少性、市場の需要などによって大きく変動します。たとえば、未使用でヒンジ跡がなく、目立った汚れやシミのないものは、高額査定が期待できます。
お手元に「北京の名勝切手」をお持ちの方は、ぜひ一度「買取福ちゃん」へご相談ください。専門の査定士が、切手の状態をしっかりと見極め、適正な価格で買取いたします。
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もしかすると、お客様が大切にされている切手が、思いがけない価値を持つお宝かもしれません。
お電話受付時間 9:00~20:00 (年中無休※年末年始は除く)
まとめ
「北京の名勝切手」の発行は、中国の人々にとって、自国の文化的価値を再認識する貴重な機会となりました。
また、国際的には、これらの切手は中国文化外交の重要な役割を果たしました。世界各国に送られる手紙や葉書に貼られることで、中国の豊かな文化を伝える「小さな大使」として活躍したのです。
さらに、美しい名勝が描かれた切手は、国内外の観光促進にも大きく貢献しました。多くの人々が切手を通して北京の名所に興味を持ち、実際に訪れるきっかけとなったのです。
これは、まだ国際的な観光地としての地位を確立していなかった当時の中国にとって、非常に重要な意味を持つものでした。
そして、天安門切手のデザイン変更をめぐる出来事は、この切手セットに歴史的な深みを与え、その価値をさらに高める結果になったのです。
このように、「北京の名勝切手」は、その美しさと希少性。そして、歴史的・文化的背景から、現在でも貴重なコレクション品として、世界中のコレクターを魅了し続けています。