中国切手「揚子江カワイルカ」が伝える儚くも美しい命の物語
中国の長江にのみ生息し、残念ながら2000年代に絶滅してしまったと考えられている「揚子江カワイルカ」。その希少な姿を捉えた中国切手が、1980年の発行から時を超え、今なおコレクターや環境保護活動家の間で高い人気を誇っています。
美しい揚子江カワイルカの姿を繊細なタッチで描いたこの切手は、単なるコレクションアイテムとしてだけでなく、中国が世界に向けて環境保護の重要性を訴えた歴史的証言でもあります。
絶滅してしまった、揚子江カワイルカ。しかし、この切手を通して、私たちは彼らの存在と、環境保護の大切さをあらためて心に刻めるるでしょう。
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目次
幻のイルカが登場する「揚子江カワイルカ切手」とは?
1980年、中国で特別な切手が発行されました。
その名は「揚子江カワイルカ」切手(※当記事では、日本の切手カタログ等で多く記載されている「揚子江カワイルカ」として記述)。
中国では「白鱀豚(バイジー)」とも呼ばれる、揚子江カワイルカの保護と、その存在を世界に知らせるという重要な使命を背負っていました。
揚子江カワイルカは、中国の長江にのみ生息する、非常に珍しいイルカです。その知能の高さから「生きた化石」とも称され、愛らしい姿で人々を魅了してきました。しかし、1980年代には、工業化や乱獲・ダム建設などの人間活動によって、彼らの住む環境は悪化の一途をたどっていました。
この切手は、そのような危機的な状況にある揚子江カワイルカを守るため、そして、多くの人に彼らの存在を知ってもらうために発行されたのです。
切手は多くの人々に愛され、コレクションの対象となるだけでなく、揚子江カワイルカの窮状を伝えるシンボルとなりました。切手を発行したことによる一定の成果はあったものの、揚子江カワイルカは残念ながら、2000年代に絶滅してしまいました。
しかしながら、この切手は彼らがかつて存在し、そして私たち人間が守るべき貴重な存在であったことを、今も静かに語り続けています。
「揚子江カワイルカ切手」のデザインと特徴
▼中国切手「揚子江カワイルカ」の詳細
・発行日:1980年12月15日
・額面:8分、60分(※100分=1元)
・切手デザイン:全2種類
・発行枚数:150万枚~1,200万枚
・編号:T57
1980年12月15日に発行された「揚子江カワイルカ切手」は、2種類の美しいデザインで構成されています。
✔ 泳ぐカワイルカ(額面8分、発行枚数1,200万枚)
✔ 2頭のカワイルカ(額面60分、発行枚数150万枚)
切手テーマ「泳ぐカワイルカ」
1,200万枚発行された、揚子江カワイルカが悠々と泳ぐ姿を描いた切手です。その流れるようなラインと、穏やかな表情が印象的です。
切手テーマ「2頭のカワイルカ」
150万枚と発行枚数が少なく、希少価値の高い切手です。寄り添う2頭の揚子江カワイルカの姿は、まるで彼らの社会性と絆を象徴しているかのよう。
この切手セットは、中国切手としては珍しく海外向けの表記(英語表記)があるのも特徴です。
英語表記を入れたのは、「揚子江カワイルカの保護を世界に訴える」という、切手の発行目的を反映していると考えられます。
発行枚数に大きな差があることから、2頭のカワイルカの切手はとくにコレクターの間で人気が高く、高値で取引されることもあります。
揚子江カワイルカの切手は、その美しさと希少性から、コレクターのみならず、環境保護に関心を持つ多くの人々にとっても貴重なアイテムです。
「揚子江カワイルカ切手」の市場価値
揚子江カワイルカ切手は、その希少性とデザインの魅力から、コレクターの間で高い人気を誇っています。
とくに、発行枚数が少ない「寄り添う2頭の揚子江カワイルカ(額面60分)」は、高値で取引されることも珍しくありません。
未使用で状態の良い切手はもちろん、揚子江カワイルカ切手の切手帳もコレクター垂涎の的です。切手帳は、切手が良好な状態で保管されていることが多く、高額査定が期待できます。
しかし、注意しなければならないのは、切手の状態によって価値が大きく変動することです。折れ・シミ・色あせなどがある場合は、査定額が下がってしまう可能性があります。
少しでも切手を高く売るために、切手の保管方法には気をつけましょう。
もし、お手元に揚子江カワイルカ切手をお持ちで、ご売却を検討されている場合は、専門の切手買取業者に査定を依頼することオススメします。
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まとめ
1979年、中国政府は揚子江カワイルカを国の絶滅危惧種に指定しました。これは、急速に進む工業化や環境汚染、そして乱獲によって、彼らの生存が脅かされているという危機感の表れでした。
国際的にも、揚子江カワイルカはIUCNレッドリストで「CR(Critically Endangered:極めて危険)」に分類され、野生での絶滅が危惧されていました。そして、2006年、ついに絶滅宣言が出されてしまいます。
揚子江カワイルカ切手が発行された1980年は、まさにこの悲劇が目前に迫っていた時期でした。切手は、美しい揚子江カワイルカの姿を描き出すだけでなく、彼らの生態や置かれている状況を人々に伝える役割を担っていました。切手の発行は、揚子江カワイルカの保護に対する国家的な取り組みを象徴するものであり、同時に、環境保護の重要性を訴える力強いメッセージでもあったのです。
揚子江カワイルカは、残念ながら私たちの元から姿を消してしまいました。しかし、この切手は彼らがかつて存在し、そして私たちが守るべき存在であったことを、今もなお語り続けています。
揚子江カワイルカ切手は、単なるコレクションアイテムではありません。この切手は、絶滅の記憶と、未来に向けての環境保護へのメッセージを伝える、かけがえのない存在なのです。