• 着物
  • 2025.01.14

威毛錦とは?龍村平蔵の帯が繰り広げる美の世界

威毛錦(おどしげにしき)は、初代龍村平蔵の代表作。
発表から現在までロングセラーを誇る、傑作との呼び声も高い美しい帯です。

今回は、長きにわたり愛され続ける威毛錦の魅力をお話ししていきます。
海外の高級ブランドも認めた、龍村平蔵のたぐいまれなる才能についても、一緒に見ていきましょう。

龍村平蔵について

龍村平蔵について

ここからは、威毛錦を生み出した初代龍村平蔵についてご紹介します。

誕生から織物作家として大成するまで、どのような道のりを歩んできたのでしょうか?

わかりやすくまとめてみましたので、ぜひご覧ください。

初代龍村平蔵とは

威毛錦を生み出した初代龍村平蔵は、努力と才能に恵まれた織物作家です。

1876年、大阪で両替商を営む裕福な家に生まれ、府立大阪商業学校(現大阪市立大学)に進学します。家業がうまくいかなくなったため学校を退学し、西陣の呉服商で働くようになりました。

織物作家としての才能

呉服商で販売の仕事をしていた初代龍村平蔵は、やがて織物自体に興味を持つようになります。

織物にのめり込むように技術を身に付け、1894年には18歳で独立

早くも才能が開花し、織物の表面に凸凹を生じさせる高浪織や、機械によるゴブラン織りを開発します。

織物への情熱

初代龍村平蔵は、古代裂(こだいぎれ)復元の第一人者としても知られています。

織物を製作するには、古代から伝わる織物を研究する必要があると考え、正倉院裂や名物裂など古代裂の復元に打ち込みました。

古代裂の研究と復元を通して得た知識と技術は、初代龍村平蔵の作品を芸術の域にまで引き上げる源となります。

経糸と緯糸からなる織物に「」の要素を加える大切さを知った初代龍村平蔵は、ほかに追従を許さない独自の織物に目覚めていくのです。

織物を芸術へ

西陣で身に付けた織物技術・古の織物から得た復元技術で、初代龍村平蔵の美的感覚はより研ぎ澄まされます。

斬新・豪華絢爛・古典的など、さまざまな印象を自在に操り、独自の織物を生涯に渡って生み出していきました。

彼が残した言葉「温故知新を織る」は、まさに自身の努力と経験を物語っているようです。1919年に開催した個展では、作品を見た芥川龍之介から「芸術的」と賞賛されます。

後に、クリスチャン・ディオールから生地の製作依頼を受けるなど、海外でもその美しさが認められるようになりました。

初代龍村平蔵の技術は今に引き継がれ、歌舞伎座の緞帳(どんちょう)のほか、国内ハイエンドホテルをも彩っています。

「The Okura Tokyo」のエントランスやロビーには龍村平蔵の作品が飾られ、芸術品としての織物の可能性を体感できるでしょう。

威毛錦とは

威毛錦とは

威毛錦は、初代龍村平蔵による代表作の1つです。

1938年、ドイツの手工業博覧会で金賞を受賞して以来、今もなおロングセラーが続いています。

威毛錦の由来

武士が戦で身に付ける鎧(よろい)からインスピレーションを受け、誕生した図案です。

威毛(おどしげ)」とは、敵の攻撃から身を守るための小札(こざね)同士を、1段ずつ結びとめる皮やひも(おどし糸)のこと。完成した際、ひもが整列した様子が羽毛のように見えるため、「威毛」と呼ばれるようになりました。

なお、「威(おどし)」とは、小札にひもを通すことを意味する「緒通し」のことです。

威毛錦の特徴

威毛錦の最大の特徴は、その鮮烈な色彩と迫力あるデザインにあります。

まず目を引くのは、地色に用いられた黒や緑といった力強い色合いです。

「威毛」には、それらと対比するような鮮やかな色を用い、コントラストを生み出しています。

その「威毛」の部分には、クレヨン箱から取り出したような、黄やオレンジなどの明るい色が惜しみなく使われ、見る者を圧倒するほどの存在感を放っているのです。

このような大胆な色使いは、一歩間違えれば野暮ったく見えてしまう危険性も孕んでいます。しかし、威毛錦が上品な雰囲気を纏っているのは、織物技術に卓越した初代龍村平蔵の技の賜物といえるでしょう。

絶妙な箔使いが、全体のバランスを美しく調和させ、格式の高さを損なうことなく、洗練された印象を与えています。

デザインの源泉となったのは、先述したように「武士の鎧(よろい)」です。

鎧から発想を得て生まれた力強い絵柄は、「矢をも通さず万難を排す」という縁起の良い意味が込められており、見る者に勇気と希望を与えてくれます。

そのため、威毛錦は式典やお祝いの席など、格式高いフォーマルなシーンに最適な織物なのです。

威毛錦の帯を締めれば、その力強い美しさが身に纏う人の心までをも引き締め、自信を与えてくれることでしょう。

現在では、伝統的な黒・白・緑の組み合わせに加え、銀ねずや淡い色を地色に用いたタイプも登場し、より幅広いコーディネートを楽しめるようになりました。

威毛錦は、時代を超えて愛され続ける、まさに「日本の伝統美の結晶」といえるでしょう。

威毛錦まとめ

威毛錦まとめ

威毛錦は、織物界に革命をもたらした初代龍村平蔵が、その卓越した技術と情熱を注ぎ込んで生み出した、まさに芸術作品と呼ぶにふさわしい織物です。

その大胆かつ繊細なデザインは、見る者の心を捉えて離さず、纏う者に特別な気品と風格を与えます。

これほどの存在感を放ちながら、決して下品になることなく、むしろ洗練された美しさを感じさせるのは、生涯を織物一筋に捧げた初代龍村平蔵の類まれなる才能の証といえるでしょう。

威毛錦は、人生の節目にこそ身に着けたい、そして次世代へと大切に受け継いでいきたい、日本の伝統美の結晶です。

とくに、初代龍村平蔵が手掛けた威毛錦は、美術品としての価値も非常に高く、市場でも高値で取引されることが多い稀少な逸品です。もしお客様がその貴重な威毛錦を所有し、長年にわたって大切に保管されてきたのであれば、その価値を正しく知るために、一度専門家の査定を受けてみるのも一考かもしれません。

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もちろん、査定後に必ずしも売却する必要はございません。

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