着物作家・木村雨山とは?買取相場はどのくらい?
今回は木村雨山(きむらうざん)についてまとめてみました。
木村雨山は重要無形文化財「友禅」の保持者、つまり人間国宝のひとりです。
「加賀五彩」を活かし、伝統的な加賀友禅に日本画の要素を取り入れた作風が特徴だといわれています。
着物買取の世界でも木村雨山は注目を浴びており、とくに絵柄が豪華な留袖や訪問着は高価買取の対象になります。
今回は木村雨山のプロフィールや作風について紹介したのち、過去事例をもとに「買取金額」についてもお伝えしていきます。ぜひご覧ください。
目次
木村雨山とはどんな作家?
木村雨山は1891年(明治24年)、石川県金沢市で誕生しました。出生時の名前は文二(ぶんじ)。学生時代は勉学にも秀でており、絵を描くことが大好きな少年だったといいます。
そんな文二が住む金沢市は昔から伝統工芸品である「織物」の生産が盛んな町であること、また地元の草木を使った染色が行われていたことから、自然と「染色の道に進みたい」と思うようになりました。
ポーツマス条約が締結された1905年、木村文二は高等小学校を卒業。14歳という若さで上村雲嶂の弟子となります。
ちなみに上村雲嶂はこの当時「加賀友禅の名工」と謳われていた友禅職人で、のちの「雨山」の名の由来にもなる師匠にあたります。
上村のもとで加賀友禅の基礎や技法を学びながら、大西金陽(おおにしこんよう)から日本画の手ほどきをうけた文二。
1924年、年齢にして32歳になったとき、一人前の加賀友禅職人として独立を果たします。
そしてこのとき、上村雲嶂の名にある「雲」から「雨」を、そして「嶂」から「山」を用いて「雨山」という名を受けました。こうして、友禅師・木村雨山が誕生したのです。
1928年、第9回帝国美術院展覧会(以下、「帝展」)に出品した『リス文様壁掛』が初入選し、1934年に行われた第15回帝展では縮緬地友禅訪問着『花鳥』が特選を受賞。
人気友禅職人としての地位を築き上げていく木村雨山でしたが、常に自分の作品の「価値」を見出すための研究、出品を怠らなかったといいます。
そうした姿勢が功を奏し、1955年、無形文化財「友禅」の保持者として認定されました。
人間国宝となった木村雨山はこのあとも数々の作品を手がけ、1965年には紫綬褒章、1976年には勲三等瑞宝章を受賞しています。
日本画の技法を取り入れた新しい加賀友禅
加賀友禅はかつて武家にも好まれていたという藍(青色)、えんじ、黄土色、緑、紫を使った『加賀五彩』を基調としています。
木村雨山の友禅はこの『加賀五彩』を最大限に生かし、さらに大西金陽のもとで学んだ日本画を融合させているという特徴を持ちます。
また、一般的な加賀友禅には「しぼり」や刺繍といった華美な装飾はされておらず、外側から内側にかけてぼかしてゆく「外ぼかし」という技法が取り入れられていますが、木村雨山の初期の作品には「絞り」や刺繍など、京友禅を思わせる技法が取り入れられており、方刷毛を使って行う独特な「ぼかし」にも注目されました。
また、幼少の頃から大好きだったという鳥や花、草木といったものをテーマとし、加賀友禅らしい「写実的な」作品も多く発表しています。
伝統的な加賀友禅を守りながら、新しい技法を組み合わせた「木村雨山の友禅」。柔らかな風合いがとても心地よく、見るものの心を惹きつけます。
木村雨山の作品紹介
友禅師として、数々の名作を生みだした木村雨山。ここでは木村雨山の作品の一部をご紹介いたします。
『麻地友禅瓜模様振袖』
1937年に制作されたこちらの作品は生地に麻を用いており、タイトルにある「瓜」のほかこおろぎや蝶、蜻蛉(とんぼ)が描かれています。これらの生物、植物を彩るのは『加賀五彩』で、ところどころに「しぼり」を使って幾何学模様があしらわれているのが特徴となっています。
こちらは第1回・新文展に出品された作品で、現在は石川県立美術館に貯蔵されています。
『友禅扇面散(せんめんちらし)訪問着』
1940年に制作されたこちらの作品はタイトルからわかるように、優雅に舞う扇がテーマとなっています。「友禅らしい」といえるはっきりとした配色が特徴で、全体はコーラルピンク、扇には朱色や白色、山吹色や黒などが使われています。
こちらも現在は石川県立美術館に貯蔵されています。
友禅訪問着『魚のむれ』
戦後の作品となるこちらの作品は1955年に制作されました。
通常、花や草木、日本の四季といったものがテーマとされることが多い加賀友禅ですが、こちらは海を泳ぐ魚をテーマとした非常に珍しい作品で、集団で行動する魚の群れをリアルに表現しています。
ポイントは魚の躍動感が伝わってくるような構図です。上半身の場所には小さめの魚を、そして裾の広がりに合わせて大きな魚が配置されており、回遊する方向も小さな魚たちとは逆となっています。
まるで水族館のワンシーンを見ているような、そんな気持ちにさせてくれる作品です。
『春秋の譜』
1935年に制作された『春秋の譜』は加賀友禅の技法を用いて作られた屏風になります。
左側(左隻)には春の訪れを表す梅や椿、あやめの周りを鳥たちが舞い、右側(右隻)には桔梗や紅葉している木々、落ち葉のもとにウサギや栗が描かれています。
「写実的」といった点では加賀友禅の特徴といえますが、同系色で春と秋を描くといった点では従来の加賀友禅にはみられない技法だとして非常に高い評価を得ています。
木村雨山の着物買取価格はどのくらい?
すでにこの世を去っている木村雨山。もう新しいものが作られることがないという「希少性」と、人間国宝が制作したという価値の高さが認められ、中古市場でも高い人気と需要があります。
気になる買取価格ですが、過去には20万円で買取されたという事例があります。さらに、時期によっては価値が大きく変わることもあります。
しかし、着物買取の世界では、同じ作者が作った着物であっても金額に大きな差が現れるということは珍しくありません。
つまり、お持ちの雨山作品が20万円を超える可能性もあるということですが、逆をいえば「着物を見る査定士によっては大幅に値段が下がることもあり得る」ということです。
豊富な知識や経験を持つ買取業者を利用することが大切なポイントとなります。
福ちゃんは木村雨山を含む作家物の着物の買取に力を入れています。ご売却をお考えの際はぜひ弊社の無料査定をご利用ください。