着物作家・由水十久とは? 買取相場はどのくらい?
今回は由水十久(ゆうすいとく)についてまとめてみました。
由水十久は「加賀友禅の巨匠」とされる人物で、現在でもファンの多い友禅作家のひとりです。
彼の作品の特徴は「唐子(からこ)」と呼ばれる子どもなど、人物が描かれているという点があげられます。
「なごみと遊び心と、お洒落心」をモットーに、作品作りが続けられています。ここでは、由水十久のプロフィールや唐子を描かれている理由、また気になる買取価格についてご紹介したいと思います。
目次
由水十久とはどんな着物作家?
由水十久は1913年、石川県の金沢市で生まれました。幼い頃の名前は「徳男」。
日本画に興味を持っていたという由水十久は、14歳という若さで京都に出て友禅作家・紺谷静蕉氏の門下生となります。
ここで10年以上友禅染めの基礎、基本を学んだ由水十久は1938年に独立。
1947年には拠点を生まれ故郷・金沢に戻します。この頃、由水十久は「金沢の伝統」を重んじながら、絵画を思わせるような写実的な文様制作に励んだといいます。
こうして精力的に作品作りをしてきた由水十久。1960年代になると「由水十久」の名前は全国規模のものとなり、各地で個展を開催するほどの友禅作家に成長しました。
1977年には伝統工芸士、翌年には石川県の指定無形文化財「加賀友禅」保持者に認定されます。
またこのときに「うなゐ」を出版。誰もが手に取れる書籍という形で、自らの世界観を表現しました。
ちなみに「うなゐ」とは7~8歳の童児がしていた髪型をさす言葉で、この髪型をしている「子ども」をさす言葉でもあります。
この作品集には、のちに「ユニセフ・グリーディングカード」のデザインに選ばれる作品も収められていることから、海外でも大変話題になりました。
1988年に友禅作家としての生涯を閉じましたが、同年に次男の充さんが「由水十久」を襲名。二代目・由水十久として、彼にしか表現できない「由水十久の世界観」を表現し続けています。
由水十久の友禅は人物をモチーフにしている?
由水十久の友禅の特徴は人物が登場していること。
一般的な加賀友禅は移ろいゆく四季のさまや、自然界で見られる草木などを写実的に表現するものが多いとされていますが、由水十久の作品には「人物画」を題材にしたものが多く見られます。
中でも初代由水十久が好んだのが「唐子」、「わらべ」です。
「唐子」とは「唐の子」、つまり中国風の髪型をしている、あるいは中国の服を身に付けている子どもを意味します。
日本では唐子が描かれた陶磁器などが多く、「縁起物」として用いられることも多いようですが、由水十久は「子孫繁栄」また「たくさんの子どもが生まれてくるように」という思いを込めて描いていたといいます。
また、人物画へのこだわりは非常に強く、独自の「人物の造形方法」を編み出したというエピソードは非常に有名です。
一つの作品を仕上げるために、多いときは500回を超えるポーズを弟子に取らせていたという由水十久。どの角度から見ても美しく、そして童子のかわいらしさ、また元気の良さを表現するための労力は惜しまない作家だったといいます。
一方、二代目由水十久は父の作風を継承しつつも独自の世界観を貫いています。童子が描かれていない作品を「非童子模様」と称しており、加賀友禅らしい自然の美しさや透明感、また「お洒落さ」を表現しています。
由水十久の作品は「落款」に注目!
「落款」とは自分の作品につける印やサインのことをさします。
加賀友禅の場合、正式な「加賀友禅作家」として認定されるためには加賀染振興協会に落款を登録する必要があり、これは実の親子であっても同じものを使うことは許されません。
よって、初代、二代目それぞれ違う落款を登録しています。
初代由水十久の落款の特徴は「細長い長方形」です。長方形の中に「十」と「久」が描かれているのですが、書体が独特であるため、字として認識するのが難しいデザインだともいわれています。
次に二代目由水十久の落款ですが、二代目十久は細長い六角形の中に「十」と「久」を描きました。
初代ほどではありませんが、こちらも有識者でないと「由水十久の着物だ」と見分けるのは難しいかもしれません。
ちなみに、着物買取の世界では初代由水十久のほうが高い買取額となる傾向にあります 。
これは、すでに初代由水十久が亡くなっていること、今後新しいものが作られることがないといった「希少性」が買取額を左右しているためです。
由水十久の作品紹介
ここでは初代由水十久の作品を紹介していきたいと思います。
加賀友禅名古屋帯『虫籠と童子』
描かれているのは2人の兄弟と見られる子どもです。切りそろえられた前髪が可愛らしく、兄と見られる子どもが虫籠を持ち、弟と見られる幼児が虫籠の中をのぞいています。
子どもらしいしぐさ、柔らかさが忠実に描かれており、とある夏の一日を見ているよう。背景には野菊が描かれており、季節感を感じる作品となっています。
加賀友禅訪問着『風車』
風車(かざぐるま)を持つ子供が元気いっぱい駆け回っている様子が描かれているこの作品は、子どもを通じ「喜び」や「楽しさ」、そして「生命讃歌」を表現しています。
生地のえんじ色が持つ「大人っぽさ」が前述したテーマをさらに引き立てており、非常に美しく、楽しい気持ちになる作品となっています。
こちらは石川県にある石川県立美術館に所蔵されています。
加賀友禅訪問着『歌合』
初代由水十久は日本の歴史も重んじ作品づくりを行ってきました。この『歌合』には平安時代の貴族たちが歌を詠んでいる姿が描かれており、一人ひとり異なる表情や衣装がポイントになっています。こちらも現在石川県立美術館に所蔵されています。
由水十久の着物買取はどれくらい?
着物の需要は年々減少しているといわれています。
しかし、由水十久のような有名作家の着物となると「希少性」が認められ、高価買取が実現する場合があります。
過去事例では30万円の買取価格がつけられており、時期によってはさらに大幅に価値が変わることもあります。由水十久の着物をお持ちの方は、現在の相場や買取価格をチェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、福ちゃんには着物に精通した査定士が在籍しており、由水十久の着物も積極的に買取を行っています。
査定・出張は無料です。他店で断られてしまった着物でもお買い取りができる場合がございますので、着物の買取はぜひ福ちゃんにお任せください。