着物作家・志村ふくみとは?買取相場はどのくらい?
今回は着物作家の志村ふくみについてまとめてみました。
志村ふくみは「紬織」の重要無形文化財保持者でありながら「随筆家」という顔も持つ文化人です。
彼女の作品の特徴は「紬織」「草木染め」で、日本の自然、歴史を感じることができる作品が数多く見られます。
そんな志村ふくみの作品は中古で出回ることがほとんどないため、買取の世界でも大変注目されています。
今回は志村ふくみの生い立ちや染織の道に進むまでのあゆみ、そして気になる買取相場についてまとめてみました。
目次
志村ふくみはどんな着物作家?
志村ふくみは1924年、滋賀県の近江八幡市に生まれました。大正デモクラシー華やかなりし頃に誕生した彼女は、2歳になると叔母の養子となり苗字を「志村」と改めます。
志村家で大切に育てられた志村ふくみですが、16歳ごろになると自分の出生に疑問を持ち始めます。そしてこれを母に打ち明けた17歳のある日、実母である小野豊と兄の存在を知ることになりました。
兄はすでに病気を患っており、もう先が長くない状態でした。
志村ふくみはこの兄の側で祈願の意を込めた織物をしており、このときに「織物の道に進みたい」と思うも、これが実現することはありませんでした。
1942年、文化学院を卒業した志村ふくみは1949年に結婚。2人の子どもに恵まれますが、早い段階で離婚。この時代に珍しい「シングルマザー」として2人の子どもを養っていかなければならない状況になってしまいました。
このとき、実母である小野豊のもとを訪れた志村ふくみ。彼女はこのときのことを自身の著書の中で「どん底だった」としていますが、そういった状況の中で、若き日に抱いた「織物で生きていきたい」という思いが蘇ったのです。
志村ふくみは子どもを養父母に預け、小野豊が住む近江八幡で織物をはじめます。
しかしこの時代日本は高度経済成長期を迎え、多くの産業が機械化していました。「織物で食べていく」ということは自ら茨の道に進んでいくようなものだったのです。
それでも、志村ふくみは自分で目指した道を信じ、諦めずに染織活動を続けてきました。そして1957年、第4回伝統工芸展に自身の作品を出品します。
出品するにあたっては小野豊の猛反対がありました。実は自身も染織の道を志していた小野豊。染織の道の厳しさを知っていることから、娘の作品は「未熟だ」と思っていたのです。
しかし、出品した作品は見事入賞。
これを機に自宅の隣に作業場を設け、染織家として活動をはじめます。
1983年には京都府文化賞功労賞を受賞し、翌年には衣服研究振興会衣服文化賞を受賞します。
そして1990年。これまで「農民の女がする仕事」とされていた紬の美しさを引き出し、これを世に広めたこと、そして芸術性の高さなどが評価され、重要無形文化財「紬織」保持者に認定。
人間国宝となった志村ふくみはその歩みを止めることなく、2013年には後継者育成の場として同じく染織家の道を歩む娘・志村洋子とともに『ArsShimura(アルスシムラ)』を設立します。
その後、文化勲章を受章。こうした数々の活動をしながら随筆活動も行っている志村ふくみは、現在も染織の素晴らしさを世に伝え続けています。
「紬織」と「草木染め」
志村ふくみを語るうえで「紬織」と「草木染め」を外すことはできません。
まず「紬織」ですが、紬織りとは「紬糸」を使って織った織物のことをさします。紬糸は、蚕の繭や真綿をつむいで作る糸です。
紬織りで仕上げる着物「紬」は大変丈夫で、暖かく通気性が良い。そして着用していくことでその人にしか出せない「風合い」が出てくるといいます。
続いて「草木染め」ですが、これは草や木から抽出された色素を使って染め上げる技法をさします。自然界にあるもので色付けをしているため、ナチュラルで優しい仕上がりとなります。
志村ふくみはこの「草木染め」にこだわっており、染めの工程にことを「草木が抱く色をいただく」と表現していることが随所で確認されています。
志村ふくみの作品紹介
ここでは志村ふくみの作品についてご紹介します。
市場で見かけることはほとんどないとされる志村作品ですが、ここで作風などをお伝えできればと思います。
『本和染結紋手紬織着尺秋霞譜』
『秋霞』と呼ばれるこの作品は1958年に作成し、第5回日本伝統工芸展に出展した作品です。この作品の特徴は藍染めであること。濃淡が美しく、これらの組み合わせによって霞んだ夜を連想させてくれます。
現在は京都国立博物館に所蔵されています。
『夕顔』
2003年に制作された『夕顔』。
こちらは紫式部の『源氏物語』をテーマに作られたシリーズものの作品のひとつとされています。
桃色のグラデーション、市松模様を思わせる模様が差し込まれているこの作品は「控え目でありながら、小粋。上品だけど大胆」そんな夕顔という人物像を見事に再現しています。
『夕顔』は現在、滋賀県立近代美術館に所蔵されています。
『梔子熨斗目』
こちらは1970年に制作された作品で、『夕顔』と同じ滋賀県立近代美術館に所蔵されています。
美しい山吹色が特徴で、袖の部分には縦、横と細かな線を用いた模様が施されています。
志村ふくみの作品にはグラデーションや格子模様といったものが取り入れられることが多いのですが、この作品はいたってシンプル。草木染めの美しさを堪能できる仕上がりとなっております。
志村ふくみの着物買取価格はどのくらい?
市場に出回ることが少ない志村ふくみの着物ですが、すべてが美術館に所蔵されているわけではありません。そのため蒐集家が多く、着物愛好家の間では「いつか手にしたい憧れの着物」として話題です。
着物の買取業界では「希少性」や「年代」、「状態の良さ」「色・柄」などを基準に値付けを行います。志村ふくみの場合「人間国宝のひとりであること」「希少性が高い」ことから、非常に高額で買取されています。
200,000円以上の買取は堅く、〜800,000円程度が買取相場です。志村ふくみの場合、恋焦がれる人が多いことから、1,000,000円以上の価格がつく可能性もあります。
前述したとおり着物の買取は「状態」「色・柄」が大きく関係するため、同じ志村ふくみの作品であっても、買取価格には大きな幅があります。
志村ふくみの作品以外にも共通することですが、「状態」とは保管状態のほか、「付属品の有無」も含みます。
作家物の着物の場合、作り手を示すサインや原産地、織り方や染め方を記載する「証紙」がついてくることがあります。あるものとないものとでは、蒐集家からの需要も変わってくるため、価格に大きな差が生じます。
言い換えれば、少々のシミがあっても志村ふくみの作品とわかる付属品が揃っていれば高価買取も夢ではないということです。
そのため、付属品やサインなどはできるだけ取っておくようにしましょう。
福ちゃんには着物買取の経験が豊富な査定士が在籍していますので、証紙がない志村ふくみの着物も安心して査定依頼ください。「志村ふくみの作品と思われるものがある」「まずは値段を知りたい」などといったご依頼も喜んで承ります。
買取福ちゃんは「価値に見合った価格」にこだわり、お客様に満足いただける買取を目指しています。査定、出張は無料でございますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。