三味線の弾き方|姿勢・構え方から基本奏法まで
三味線の弾き方に興味がある方の中には、
「難しそうなイメージがある」
「どんなふうに弾けばいいのかわからない」
という方もいらっしゃるでしょう。
三味線は扱いが難しい楽器ではありますが、正しい持ち方や姿勢、弾き方を身に付ければ少しずつ上達できます。
当記事では、三味線の初心者向けに基本的な持ち方や構え方、弾き方などをご紹介します。
三味線の基礎を独学で学びたい方や、基礎知識を確認したい方はぜひ参考にしてください。
目次
【三味線の弾き方】姿勢
三味線を弾くための第一歩として、正しい姿勢を身に付けることが大切です。
三味線を正座で弾く場合は、足の親指を重ねて座り背筋を伸ばすと正しい姿勢になります。
また、椅子に座って弾く場合、ひじ掛けや背もたれがなく、座った際に両足のかかとが床に付く高さの椅子選びをオススメします。
背もたれがある椅子を使用する際は、背もたれに寄りかからず、少し浅く腰かけてください。椅子に座って弾く場合でも、正座と同様に背筋を伸ばしましょう。
【三味線の弾き方】持ち方・構え方
三味線を弾く際には、正しい姿勢であることはもちろん、三味線を弾くのに適した持ち方・構え方をしなければなりません。
以下では、三味線の正しい持ち方・構え方について解説いたしますので参考にしてください。
「指かけ」を付けて「撥(ばち)」を持つ
三味線を構える前に「指かけ」を用意し、左手に付けましょう。
指かけとは左手の動きをスムーズにし、三味線の棹や弦を操りやすくするアイテムです。
指かけの両端には輪が付いており、それぞれ幅が違います。左手に装着する際は、幅が広いほうの輪を親指、幅が細い輪を人指し指にはめましょう。
また、装着の際には親指の股に隙間ができないようにしてください。
左手に指かけを付けたら、右手で撥(ばち)を持ちます。撥は重心の真ん中を持ってください。
親指と人差し指を撥の側面の角に当て、中指・薬指で撥を巻くように、小指は反対側に出して撥を挟むようにするのが正しい持ち方です。
右ひざの上に三味線の胴を乗せる
三味線は右ひざの上に胴を乗せ、斜めに構えます。
構えた際に三味線の裏側が自分のお腹に当たってしまうと、三味線の音が響かないため少し前に出して構えましょう。
また、三味線を安定させるために、ひざの上に「ひざゴム」という滑り止めを乗せる方もいます。
はじめから三味線の胴にひざゴムを貼っておくという方法もございますので、三味線がグラグラして演奏しにくいと感じた際には工夫の1つとして参考にしてください。
初心者は、はじめから三味線を斜めに構えようとすると、正しい構え方にならないケースがあります。
まずは三味線を水平に持ち、そのまま胴を右ひざに下ろす方法を取れば、フォームが乱れにくいためオススメです。
胴かけの上に手を添える
撥を持った右手を「胴かけ」の上に添えます。
胴かけとは、三味線を構えた際に胴の上部にある、硬いカバーが付けられた部分のことです。
はじめに、右腕を三味線の胴の前に、やや上を向けた状態で差し出します。次に、差し出した小指側の手首から10センチほどの場所を、胴かけのやや右側に置いてください。
最後に肩の力を抜き、腕の重みを胴の角へと自然にかかるようにします。
正面から見たときに、右手首が三味線の胴と三角形になるような姿勢になっていれば正しい構え方です。
三味線は両手で支えているように見えますが、実際に左腕はほとんど添えているだけであり、右腕が三味線を支える役割を果たします。
高さ・角度を調節する
次に、三味線の棹(さお)と糸巻きの高さ・角度を調整します。
棹は、糸巻きが自分の耳たぶの高さと同じになるように角度を付けてください。
ただし、津軽三味線の場合はさらに角度を付けた構え方になります。
棹は指かけの上に乗せ、左手の手の平は正面から見えないように軽く丸めてください。右の手首は常に内側に曲げているのが三味線の正しい構え方になります。
望ましいのは、リラックスした状態で正しい三味線の構え方ができることです。 慣れないうちは姿見などで、自分の姿勢をチェックするとよいでしょう。
【三味線の弾き方】調弦
調弦とはチューニングのことであり、三味線の音程を正すための行為です。
三味線の調弦は大切で難しいため、独学よりも三味線教室の講師などから学び、身に付けることをオススメします。
下記では、三味線の基本的な調弦3種類や、詳しい調弦方法についてご紹介します。
本調子 三味線の基本となる調弦。
一の糸と二の糸との音程が4度、二の糸と三の糸との音程が5度になるように調弦したもの。二上がり 本調子に対して二の糸が高い調弦。
一の糸と二の糸との音程が5度、二の糸と三の糸との音程が4度になるように調弦したもの。三下がり 本調子に対して三の糸が低い調弦。
本調子から三の糸を1全音(長2度)下がるように調弦したもの。
三味線の一般的な曲を弾く際は、上記の3種類の調弦を覚えておくとよいでしょう。
3本の糸の調弦方法
三味線には3本の糸があり、それぞれ太さが異なります。
最初に調弦が必要なのは基本の音となる一の糸で、3本の中ではもっとも太い糸です。
はじめに、三味線の胴を自分の右前方に置き、二の糸巻きを自分の腰骨に当ててください。
次に左手で一の糸の糸巻きを回し、同時に右手で糸を伸ばすことで調弦を行います。
三味線の熟練者は自分の耳を頼りに調弦できますが、慣れないうちはチューナーなどの調弦器を利用し、正確な音を確認しながら調弦を行うとよいでしょう。
一の糸の調弦が終わったら、二の糸と三の糸も同じ手順で調弦を行います。
三味線は音が変わりやすいため、3本とも調弦が終わり、少し経ったら再度調弦を確認してください。
糸の伸ばし方
三味線の糸は、演奏している間に少しずつ伸びていくという特徴があります。三味線の糸が意図せず伸びると音程が狂い始めてしまうため、演奏前に自分である程度糸を伸ばしておくことが大切です。
糸は、左手の親指で糸巻きを押さえながら右手で伸ばします。
一の糸を伸ばすときは一の糸巻きというように、伸ばしたい糸の糸巻きを持ちながら行うことが大切です。
糸巻きの中に巻かれている糸も演奏中に伸びる可能性があるため、しっかりと伸ばしておきましょう。
ただし、糸が完全に伸びきるとかえって音が悪くなるため、3〜5回を目安に伸ばしましょう。
【三味線の弾き方】基本的な奏法
三味線は、3本の糸と撥(ばち)で演奏するのが大きな特徴です。
弦の振動が胴に共鳴することで、よく響く美しい音が出ます。
そして、三味線の基本的な奏法は、撥を下ろして音を出すことと糸を押さえて音程を作ることです。
以下では、それぞれの奏法について詳しく解説いたします。
撥(ばち)を下ろして音を出す
三味線は糸に撥を下ろすことで音が出ます。
撥の角で撥皮(ばちがわ)を叩くように手を下ろすのが、基本的な音の出し方です。(撥皮とは三味線の胴に貼られた半円形の革を指します。)
三味線は、力の入れ具合によってさまざまな音を表現できるのが特徴です。
無理に力を込めて弾くのではなく、撥の重さで弾くことが三味線でいい音を出すコツです。
はじめは左手で糸を押さえずに、そのまま弾いてみるとよいでしょう。できるだけ糸を見ないで弾くことで正しい姿勢が取れ、早く上達しやすくなります。
糸を押さえて音程を作る
三味線は、ギターのように左手で糸を押さえることで音程を作れます。
糸を押さえる際は、指先の爪に近い部分を直角に立てるようにして弦に当てましょう。
糸を押さえるときに使用する指は人差し指が中心であり、中指と薬指は適宜使用します。
そして、三味線で糸を押さえるポジションは「勘所(かんどころ)」と呼ばれます。
三味線にはギターのように弦を押さえる目安となる突起がないため、耳で音を確認しながら指の位置を覚えましょう。
また、三味線は糸が伸びることで音が変わりやすく、音の変化に応じて勘所も変化します。そのため、音によく耳を傾けながら勘所を移動させる技術も必要です。
初心者にオススメの三味線・練習曲
姿勢や調律の方法が身に付いたら、いよいよ曲を奏でてみましょう。
下記では、三味線を始めたばかりの方にオススメの練習曲を2つご紹介します。
さくらさくら |
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「さくらさくら」は多くの方にとって耳なじみの曲であり、フレーズも短いため三味線初心者にはとくにオススメです。 使われる音数が少ない点や、複雑な運指がない点も初心者向けといえるでしょう。 |
千本桜 「千本桜」は大ヒットしたボカロ曲であり、和楽器バンドがカバーしたことでも話題になった曲です。
曲の難易度は上がるものの、スピード感や盛り上がるフレーズがあり、三味線を弾く楽しさを実感しやすい曲といえます。
スローテンポの音楽を弾くことに慣れてきた方にオススメの1曲です。
ほかにも、三味線はさまざまなジャンルの曲が演奏できます。
少しでも慣れてきたと感じたら、ご自身のお好きな曲にチャレンジしてみましょう。
また、三味線の種類によっても曲のバリエーションが広がります。 演奏ジャンルごとの「三味線の選び方」は、こちらをご参考になさってください。
▶︎ 三味線の種類|種類ごとの演奏ジャンル・三味線の選び方も解説
まとめ
三味線の正しい弾き方を覚えるためには、まず正しい姿勢と三味線の持ち方を覚える必要があります。
また、三味線の音程を正すためのチューニングである「調弦」の仕方も、正しい音程で演奏するためには大切な工程です。
三味線を演奏する際は、無理に力を入れず撥の重さで弾くように心掛けると、良い音を出せます。
また、糸を押さえて音程を作るときは、指先の爪に近い部分を直角に立てるようにして弦に当てます。慣れてきたら、初心者向けの練習曲にチャレンジしてみましょう。