ヴィオラとヴァイオリンの違いとは?
楽器にあまり詳しくない方の間では、なかなか見分けがつきにくいヴィオラとヴァイオリン。その違いについてここではまとめています。
クラシックファンの間では、ヴァイオリンは曲の主役を張ることもあるスター的な位置づけの楽器で、ヴィオラは曲に彩りを添える“縁の下の力持ち”的な楽器として知られています。
実際にヴァイオリンはモーツァルトやベートーヴェンといった名だたる作曲家たちが作曲した「ヴァイオリン協奏曲」をはじめ、主役となる楽曲が多数あります。しかし、ヴィオラがメインになる楽曲はあまりありません(ただし、バルトークの「ヴィオラ協奏曲」をはじめ、ヴィオラがメインとなる楽曲もいくつか存在します)。
では、ヴィオラとヴァイオリンの具体的な違いとしてはどんなことが挙げられるでしょうか?
ここでは、「見た目の違い」「音域の違い」をそれぞれまとめました。
見た目の違い
上述の通り、ヴィオラもヴァイオリンも4本の弦をはじくことによって音を出す弦楽器であり、あご当ての部分をあごの下に挟んで固定して弾くというスタイルも同じです。
形状の違いは、特に楽器に詳しくない方が見た場合にはほとんどわからないでしょう。
しかし、ヴィオラとヴァイオリンを並べてみると違いは一目瞭然です。
というのも、ヴィオラとヴァイオリンではサイズが異なります。
具体的には、ヴィオラのほうがヴァイオリンよりも小さいという特徴があります。
ヴァイオリンは全長が約60cm、一方のヴィオラは70cm前後となっているのが一般的です。“ひと回り違う”といっても過言ではありません。
ちなみに、ヴィオラを指して「ヴァイオリンをひと回り大きくした楽器」ということがありますが、厳密にいえばこれは誤りです。歴史的に見ると、実はヴァイオリンよりもヴィオラのほうが早く成立しています。
つまり、本来は「ヴァイオリンはヴィオラをひと回り小さくした楽器」と表現すべきなのです。
実際に歴史を見てみると、ハッキリとした時期は断定できないものの、ヴィオラは15~16世紀頃のヨーロッパで使われており、その後ヴァイオリンが登場したとされています。
その証拠に、そもそも「ヴァイオリン(Violin)」は「ヴィオラ(Viola)」に「小さい(-ino)」をつけたイタリア語の「Violino」が語源になっています。
要するに、「ヴァイオリン=小さいヴィオラ」という意味なのです。
音域の違い
ヴィオラとヴァイオリンは見た目の大きさが違うほか、出せる音域にも違いがあります。
ヴァイオリンは澄んだ高音を響かせることができる一方、ヴィオラは高音を出すには向かない楽器で、落ち着いた低音がメインとなります。
ヴァイオリンのほうがヴィオラよりも明るく華やかな印象があり、そのためクラシック曲などでも目立つところでよく使用されています。その一方で、ヴィオラは渋い低音がメインとなっているため、曲に重みや彩りを添えるための使われ方をすることが一般的となっています。
その他の違い
ヴァイオリンはヴィオラに比べると澄んだ高音をよく出せることから、クラシック曲でメインになるケースが多く見られます。その一方、ヴィオラは“縁の下の力持ち”的な立ち位置で曲に彩りを添えます。
そんな音域の違いの他に、「機動性の違い」もポイントです。
ヴァイオリンは1音ずつはっきりと流れるように奏でることができるため、繊細に展開していく曲を演奏するのに向いていますが、ヴィオラは1音を出すためにしっかりと弾かなければならず、その分だけどうしてもヴァイオリンに比べて鈍重になってしまいます。要するに、ヴィオラはヴァイオリンに比べて機動性が低いわけです。
そのこともあり、ヴィオラは楽曲のメインで使用されることが少ない傾向にあります。
まとめ
ヴィオラは弦楽器では中音部を受け持ち、アンサンブルで使用されることが多い楽器です。ヴァイオリンは曲のメイン演奏を担うことも多く、ソロでも活躍の機会がたくさんあります。
ヴィオラとヴァイオリンは一見、似たような見た目をしていますが、ヴィオラの方が少し大きく作られているのが特徴です。
歴史的観点から見るとヴィオラの方が先に登場したと考えられており、ヴァイオリンという楽器の名前には「小さいヴィオラ」という意味を含んでいます。
音域はヴィオラが低音、ヴァイオリンが高音を得意としているため、ヴィオラは曲に重みや厚みを出し、ヴァイオリンは明るさや華やかさを与える役割として使われることが多いでしょう。
また、ヴィオラとヴァイオリンは機動性にも違いがあり、1音を出すのにしっかり弾く必要があるヴィオラに対し、ヴァイオリンは機動性が高く1音ずつはっきり流れるように弾くことが可能です。
このような特徴があるため、オーケストラ等では違う役割を担い、お互いの相乗効果で1曲1曲が作り上げられます。