ヴィオラとは?種類やバイオリンとの違いも紹介!
ヴィオラはオーケストラで使用される弦楽器の1つです。中音部を受け持つ楽器で、見た目はバイオリンに似ています。メロディーを演奏するバイオリンの影に隠れ、オーケストラでは全体の音を支える重要な役割を担っています。オーケストラだけでなく、ヴィオラだけで演奏することも可能です。
当記事では、ヴィオラの特徴や種類、バイオリンとの違いとヴィオラの選び方について解説します。ヴィオラに興味があるという方は、ヴィオラの知識を得るのにぜひご活用ください。
目次
ヴィオラとは?ヴィオラの種類
ヴィオラはビオラとも呼ばれる、バイオリンに属する西洋の弦楽器です。大きさはバイオリンより大きく、チェロやコントラバスより小さいです。18世紀ごろまではオーケストラの中だけで使用されていましたが、近代以降はヴィオラ曲を演奏する独奏楽器としても活躍しています。
ヴィオラはバイオリン属の中で中音域を担う役割のため、フランス語では「アルト」と呼ばれています。ヴィオラは落ち着きのある渋い音色をしており、ピアノと相性抜群なのでさまざまな名曲で愛されてきました。
ヴィオラの誕生の歴史は正確には分かっていませんが、ヴィオラは16世紀前半に北イタリアで誕生した楽器ではないかと言われています。ヴィオラには、祖先となる「ヴィオラ・ダ・ガンバ」と「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」という楽器があり、「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」がヴィオラの語源にあたります。18世紀に入ってから「ヴィオラ」と呼ばれるようになりました。
ヴィオラ・ダ・ガンバ
「ヴィオラ・ダ・ガンバ」とは、イタリア語で「脚のヴィオラ」という意味です。膝やふくらはぎなどで楽器を支え、弓を弾いて演奏します。ヴィオラ・ダ・ガンバの祖先は、ビウエラという、ギターに似たスペインの楽器だと言われています。
ヴィオラ・ダ・ガンバは、ルネッサンス・バロック時代、王侯貴族のたしなみの1つとして愛されていました。18世紀後半に貴族社会が没落して一般市民が力をもつようになると、音楽は日常的に演奏するものから、コンサートホールで演奏を聴くという文化に変化します。コンサートホールで大きな音を出せないヴィオラ・ダ・ガンバは活躍できず、バイオリンやチェロが主流となり、姿を消していきました。
ヴィオラ・ダ・ブラッチョ
「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」とは、イタリア語で「腕のヴィオラ」という意味です。肩や腕で楽器を支え、弓を弾いて演奏します。「ヴィオラ・ダ・ガンバ」とは、楽器を支える場所や、楽器の大きさが異なります。ヴィオラ・ダ・ブラッチョのほうが小さいため、より高めの音域が得意です。
16世紀には、ソプラノ、アルト、テノール、バスの4種類のヴィオラ・ダ・ブラッチョが誕生しました。4種類のうち、アルトのヴィオラ・ダ・ブラッチョが、現在のヴィオラに発展したと言われています。
ヴィオラとバイオリンの違い
ヴィオラとバイオリンは非常によく似た楽器ですが、2つの楽器には明確な違いがあります。主な違いは「大きさ」と「音域」です。
ヴィオラはバイオリンより、一回り大きい楽器です。また、厚さも、バイオリンより厚いものがほとんどです。ヴィオラ奏者は楽器の大きさと重さを自在に操る必要があります。
ヴィオラは、バイオリンに比べて低い音域が得意な楽器です。高い音域が苦手なため、アンサンブルの中ではあまり目立ちません。しかし、交響曲では全体の演奏に厚みや広がりをもたせてくれます。独奏ヴィオラが聴けるのは珍しく、縁の下の力持ちとして全体のサポートに回ることが多い楽器です。ヴィオラの音は柔らかく落ち着いた低音が魅力で、「人間の声にもっとも近い音」と言われています。
ヴィオラの構造
ヴィオラの構造や仕組みはバイオリンとよく似ていて、形もほとんど同じです。
以下の表は、ヴィオラの構造を部位別にまとめたものです。
表板 | ボディの表側です。弾力性が高く、音響特性にも優れたマツ科のスプルース材という木材が使用されています。 |
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裏板 | ボディの裏側です。適度な硬さと美しい木目が特徴であるカエデ科のメイプル材という木材が一般的に用いられています。 |
側板 | ボディの左右横側です。裏板と同じく、メイプル材が一般的に使われています。 |
ネック | ボディに取り付けられている竿です。ヴィオラのネックはバイオリンよりも長いことが特徴的です。 |
弦 | 弦を弓で擦ることで振動を起こし、音を鳴らします。ヴィオラはバイオリンよりも五度低く調弦されます。弦には昔は羊の腸を使用していましたが、現在では金属弦を巻いたスチール弦が主流です。 |
弓 | 頑丈で弾力性も高いフェルナンブコ材が多く使用されてきました。近年では、経年劣化の少ないカーボンファイバー(炭素繊維)も人気が出てきています。 |
ペグ | ネックの上部についた、弦を巻きつけてピンと張るための部品です。 |
指板 | ネックの一部であり、ペグとボディの間に位置します。指で弦を押さえて音程を調整するための場所です。ヴィオラは、弦を押さえるのにバイオリンよりも強い力が必要となります。 |
f字孔 | 表板の左右に2つあるf字の穴です。f字孔の中で音が共鳴します。 |
駒 | 表板にあり、弦を支える部位です。駒から表板へ音が伝わっていきます。 |
アジャスター | 表板にあり、チューニングをするためのネジ状の部品です。 |
あご当て | 表板にあり、演奏する際にあごを乗せる部分です。 |
ヴィオラの構造はバイオリンとよく似ていますが、バイオリンよりボディが大きかったり、ネックが長かったり、弦を押さえるのに強い圧が必要だったりと、細かな違いがあります。
ヴィオラの選び方
ヴィオラを選ぶときのポイントは、「予算」と「大きさ」です。
まず、実際に店頭へ購入しに行く前に、ある程度の予算を決めることが大切です。ヴィオラの価格は、安価なものから高価なものまであります。ヴィオラを演奏したい方は、弓とケースをあわせて20万〜30万円相当のものを選ぶのがおすすめです。
ヴィオラの大きさに明確な基準はなく、楽器によって大きさが異なります。ヴィオラの一般的なサイズは、395mmと405mmの2種類です。395mmのヴィオラは小さいため操作性がよく、405mmはヴィオラらしい重厚な音が出せます。楽器を持ったり演奏したときの音を聴いたりして、自分にあったヴィオラを選びましょう。
ヴィオラと一緒に用意すべき弦楽器用の小物
ヴィオラを演奏したり管理をしたりするには、楽器だけでなくさまざまな小物が必要です。
下表に、必須の小物から、あると便利な小物までヴィオラと一緒に用意すべきものまでをまとめました。
弓 | 演奏に必須です。必ず購入しましょう。 |
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ケース | 持ち運びに必須です。本体と一緒に購入しましょう。 |
松脂 | ヴィオラは松脂を弓毛に塗って使用します。演奏に必須の小物です。 |
クロス | お手入れとして楽器を拭くために使うもので、松脂用・汗用の2枚が必要です。 |
テールピース | 弦を引っ張り、音を調整する道具です。音色がとてもよくなります。 |
レインカバー | 雨の日にケースを保護するカバーです。雨の日も安心してヴィオラを持ち運べます。 |
肩当て | ヴィオラを演奏するときの正しい構えを習得するために使うものです。楽器本体に装着して使用します。 |
あご当て用クッション | あご当て用クッションを使うことで、長時間の練習でもあごが痛みにくくなります。 |
チューナー | チューニングに使用します。 |
ミュート | 音量や音色を変化させるために使用します。演奏用ミュートと練習用ミュートがあり、練習用ミュートは防音対策に役立ちます。練習用ミュートを使うと、防音性が低い自宅でも練習が可能です。 |
温度計 | ヴィオラの管理には、適切な湿度を保つことが大切です。湿度計を使うと、簡単に湿度を確認できます。 |
湿度調節剤 | 湿度を調整することができます。湿度計と併用して適度な湿度を保ちましょう |
LEDライト | 楽譜や手元を明るく照らしてくれます。練習でも舞台でも役立つコンパクトサイズのLEDライトが便利です。 |
まとめ
ヴィオラとはバイオリンに属する西洋の弦楽器です。ヴィオラは見た目や造りはバイオリンと似ているものの、バイオリンより一回り大きく、柔らかく落ち着いた低音をしています。オーケストラだけでなく、独奏楽器としても活躍します。
ヴィオラを購入する際は弓とケースがセットになった、20万〜30万円相当のものを選ぶのがおすすめです。
ものによって大きさが異なるので、実際に持ったり、演奏したときの音を聴いたりして、好みのものを選びましょう。