バイオリンの「雑音」とは?原因と対処法について
バイオリンの雑音には、「いち早くリペアセンターに持ち込んだほうがいい場合」と「自分で解決できる場合」の2パターンがあります。今回はそんな「バイオリンの雑音」をテーマとし、原因と対処法についてまとめています。
「雑音がよくわからない」または「ずっと気になっていた……」という方、必見です。
目次
バイオリンの雑音とは
「バイオリンを始めたばかりで、どういった音が雑音なのかよくわからない」
「これって雑音?」
と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バイオリンの雑音にはいくつかパターンがありますが、代表的ものとしては「ジリジリ」「ビリビリ」といった音や、「ジージー」など虫が鳴くような音と表現されることが多いです。
バイオリン特有の済んだ音色が聴こえないというときは、下記のような原因で雑音が生じている場合があります。
バイオリン本体に原因がある場合
ニカワの剥がれ
ニカワとは、バイオリンなどの制作や修理の際に用いられる「接着剤」のことをさします。
原料は動物の骨や皮、魚の皮などすべて「天然素材」です。そのため、熱や水分(湿気など)が加わると簡単に剥がれてしまいます。
「それならば化学成分の接着剤を使えばいいじゃないか」とお考えになった方もいらっしゃると思いますが、バイオリンは木材を使っているという特質上、天然素材同士で製作するのが一番適していると考えられています。
「ニカワの剥がれ」は、誰が見てもわかるような剥がれ方をしていないことが多く、場所の特定が難しいといわれていますが、もし見つけた場合は楽器専門店やリペアセンターに持ち込み、修理を依頼するようにしてください。接着剤などを使って処置するのは厳禁です。
顎あての金具が緩んでいる
顎あてに使われている金具(クランプ)が緩んできた場合も「ジージー」といった雑音が現れます。
この場合は自分で対処が可能です。
必要なものはレンチのみ。
細い部分を顎あての金具に差し込み、少しだけ右側に巻いてみてください。ポイントは締めすぎないようにすることです。
「また緩むといけないから」と力いっぱい締めてしまうと、バイオリン全体に余計な負担がかかってしまいます。気を付けて作業するようにしてください。
アジャスターの緩み
アジャスター(正式名称は「チューニングアジャスター」)は調弦の微調整をするための部品です。
基本的なチューニング、調弦はペグを回して行いますが「補助」としてこちらを使われているという方も多いのではないでしょうか。
アジャスターはE線に取り付けられていますが、このアジャスターが緩みすぎていたり、うまく取り付けができていなかったりすると雑音の原因になってしまいます。
アジャスターを抑えて弾いたときに雑音が収まるのであれば、雑音の原因はこのアジャスターにあります。
解決方法は簡単です。
アジャスターを巻く、もしくは巻きなおしてみてください。
ちなみに初心者の方向けのバイオリンや、お小さま用のバイオリンには4本すべてに取り付けられていることが多いです。その場合は4つすべてを確認してみてください。
なお、アジャスターの位置がおかしい、曲がってしまっている、などの場合は修理が必要です。その場合は手持ちの工具で直したりせず、リペアセンターに持ち込みをお願いします。
E線のチューブ
新しいバイオリンにはE線に細いチューブが取り付けられています。
これはE線が駒に食い込まないようにするための役割を果たしているのですが、こちらが駒から外れていることで雑音が発生している場合があります。
このチューブは、「必需品」と思われていることがあるのですが、駒に食い込み防止用の薄い革や透明のシートが貼ってある場合不要です。弦を傷つけないよう、カッターなどで丁寧に切り取り処理してください。
弦が指板にあたっている
新しいバイオリンの指板は弓のような形状をしていますが、たくさん弾いたり時間が経過したりするとこの指板はわずかに変形します。
「変形」という言葉に少し戸惑われている方もいらっしゃると思いますが、安心してください。
指板は「黒檀」という木材を使用しているので、多少の変形は誰にでも起こります。
しかし、この変形により弦が指板に当たるようになると雑音が発生します。この場合は残念ながら自分でできる対処法はありません。
「弦と指板が狭くなっている」と感じたときは早めにリペアセンターに持ち込むようにしましょう。
なお、指板は修理ではなく交換となる場合もあります。
顎あてとテールピースが当たっている
バイオリンが誕生したときには「顎あて」なるものは付いていませんでした。
しかし、1820年頃、ドイツのバイオリニストによって顎あてが発明されてからは「快適に演奏ができる」と人気を博し、急速に広まりました。
現在では「あって当たり前のもの」となった顎あてですが、テールピースと接触することで雑音が生じることもあります。
顎あてにはいくつかのタイプがありますが、もっとも多くのバイオリンに採用されているといわれているが「ガルネリ型」と呼ばれるタイプです。
ガルネリ型の顎あてはテールピースをまたぐように作られているのが特徴となっています。
この場合はテールピースと接触している部分を削らないといけないため、自己解決はできません。早めに専門店に持ち込むようにしましょう。
次に「ドレスデン型」と呼ばれる顎あてですが、最近では数が少なくなってきたといわれています。
テールピースの左側にあるのはガルネリ型と変わりませんが、テールピースをまたがないのがドレスデン型の顎あての特徴です。
この場合は簡単。顎あての位置をずらしてあげましょう。
ナットの摩耗
指板の先にある「ナット」は弦と指板が接触しないように取り付けられています。しかしこのナットが摩耗してしまうと弦が指板にあたり雑音が生じてしまいます。
この場合も自己解決はできませんので、早めに修理を依頼しましょう。
バイオリン以外の理由
雑音がする際、「バイオリン以外の理由」が原因である場合があります。
「え、そんなこと?」と思われるようなものもありますが、実は意外と多いのです。
ここでは代表的な2点をご紹介します。
洋服のボタン
まず初めに疑うべきなのは洋服のボタンです。
ワイシャツを着ている方の場合、そのボタンが「ジージー」と音を立てている場合があります。
お仕事帰りや学校指定の制服を着ているときなど「ボタンがついていない洋服を着る」というのが難しい場合、このように対応してみてください。
・セーター、ベストなどを着用する
・ハンカチなどで接触部分を覆う
簡単なことですが、これでストレスなく演奏することができます。
ネックレスなどアクセサリーが当たっている
ボタンのある洋服を着ていない方でも、ネックレスがバイオリン本体に当たって雑音になっていることがあります。この場合はネックレスを取り外すことをおすすめします。
雑音がするだけではなく、ネックレスの形状によってはバイオリンの表面を傷つけてしまうことがあるからです。
「どうしてもアクセサリーを着用したい」という場合は、バイオリンに当たらないような小ぶりなピアス、イヤリングを装着するようにしましょう。
雑音はメンテナンスで防げる
「バイオリンをひと通り見てみたけど、よくわからない」という方もいるかと思いますが、バイオリンの雑音を特定するのは大変難しく、上級者やプロのバイオリニスト、専門家でないと見抜けないといわれています。
しかし、定期的にリペアセンターにメンテナンスを依頼することで、今後不具合になり得る箇所を特定してもらうことができます。
バイオリンは木製の楽器で、環境や保管方法によってさまざまな症状が現れます。
長く大切に弾いていきたい、とお考えなのであれば定期的なメンテナンスを実施しましょう。
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