- 着物
- 2025.03.01
人間国宝・北村武資の帯について|羅や経錦など織物への熱き挑戦

高貴で気品に満ちた帯を世に送り出した、人間国宝の「北村武資」氏。
「織」を知り尽くし、その可能性を極限まで追求した、まさに織物の巨匠といえるでしょう。
今回は、北村武資氏の軌跡を辿りながら、重要無形文化財に認定された「羅(ら)」や「経錦(たてにしき)」など、彼の代表的な作品をご紹介します。
北村武資氏の「織」への情熱と、彼が創り出した美しい帯の世界に触れて、和装の着こなしをさらに深めていきましょう。
目次
北村武資とは

北村武資氏は、失われた古代織物「羅(ら)」の再現や高度な技術を要する「経錦(たてにしき)」の制作により、『重要無形文化財保持者』に認定された染織家です。
古代の織物である羅に魅了されたことをきっかけに、「織」の探求に生涯を捧げ、数々の美しい帯を生み出しました。
ここでは、北村武資氏の足跡を辿りながら、その功績をご紹介します。
西陣での修行時代
1935年、京都市下京区で生まれた北村武資氏は早くに父親を亡くし、15歳から西陣で織物職人の見習いとして働き始めました。
1959年、24歳のときに「初代龍村平蔵展(※)」を見て心を強く打たれ、「龍村美術織物株式会社」に入社。作家目線で織物を制作する職人たちに感化されながら、織りの技術を磨いていきます。
※初代龍村平蔵と代表作「威毛錦」については、以下の記事で詳しくご紹介しています。美しい写真とともにお楽しみください。
▼関連記事はこちら
『威毛錦とは?龍村平蔵の帯が繰り広げる美の世界』
独立と創作活動
「龍村美術織物株式会社」から独立後、北村武資氏は自らが求める創作活動へと邁進していきます。
1963年には「友禅」の重要無形文化財保持者である、「森口華弘」氏の染織研究会に参加。そして1965年、伝統工芸日本染織展に初出品し、日本工芸会会長賞の受賞するなど、輝かしい功績を残します。
そのような北村武資氏の「受賞歴」を以下にまとめました。
1965年 | 伝統工芸日本染織展にて工芸会会長賞受賞 日本伝統工芸展 入選 |
1968年 | 日本伝統工芸展 NHK会長賞受賞 |
1972年 | 日本伝統工芸展 入選 |
1995年 | 「羅」の技法により重要無形文化財保持者認定 |
1996年 | 紫綬褒章受賞 |
2000年 | 「経錦」の技法により重要無形文化財保持者認定 |
2005年 | 旭日中綬章受賞 |
1995年に重要無形文化財保持者に認定された背景には、1972年の「羅」と北村武資氏の運命的な出会いがありました。
次の章では、その出会いから生まれた「羅」と、もう1つの代表作「経錦」について詳しく解説していきます。
北村武資の帯

北村武資氏の代名詞ともいえる「羅」と「経錦」。
どちらも失われていた古代織物を、北村武資氏が卓越した技術と情熱によって現代に蘇らせたものです。
羅:幻の織物を蘇らせる
「羅」とは、目の粗い絹織物のことで、4世紀前半頃に中国から伝わったといわれています。室町時代中期まで作られていましたが、複雑な織技法のため、応仁の乱以降は姿を消してしまいました。
この幻の「羅」を再現したのが、北村武資氏です。
1972年、「中国・長沙漢墓写真展」で見た「羅」の美しさに心を奪われた北村武資氏は、その再現に情熱を注ぎます。
再現のために自ら織機を考案し、約1年をかけて完成させた「織帯羅」は、日本伝統工芸展で入選を果たしました。
その後も「羅」に現代的な要素を取り入れるなど、芸術性を高めた作品を発表し続け、1995年には「羅」の技法により、重要無形文化財保持者に認定されました。
経錦:高度な技術が生み出す文様美
「経錦」とは、経糸で地と文様を表現する織物のこと。
複数の色の経糸を1組にして、緯糸を通しながら浮き沈みさせて文様を表現するという、制約が多く複雑な技法です。
奈良時代以降、比較的容易な「緯錦(よこにしき・ぬきにしき)」が登場してから、「経錦」は次第に織られなくなっていきました。
複雑な「羅」の再現に成功した北村武資氏は、この「経錦」の制作にも果敢に挑戦。
1983年には「亀甲花文経錦着物地」を発表し、2000年には「経錦」の技法により、重要無形文化財保持者に認定されました。
北村武資|帯の魅力

北村武資氏が作る帯は、大胆でメリハリのある文様が特徴です。
古典的な文様にも斬新で新鮮な味わいがあり、着物を身にまとう女性を、より美しく輝かせてくれます。
北村武資氏の帯の魅力は、化学染料を積極的に使用し、従来の着物には見られなかったような鮮やかな色使いにもあります。
鮮やかすぎる糸でさえ、北村武資氏の手にかかれば、洗練された配色と文様構成によって、高貴な帯の一部へと昇華されるのです。
織物の組織と構造を深く理解していたからこそ、北村武資氏は従来の常識を打ち破りながらも、独自の世界観を確立し、高い評価を得られたといえるでしょう。
北村武資の帯まとめ

古典的でありながら大胆、そして繊細さと高貴さを兼ね備えた北村武資氏の帯。
その洗練された和の装いは、多くの女性たちを魅了し続けています。
北村武資氏の作品に触れ、彼の多彩な才能と情熱をぜひ感じてみてください。
北村武資の帯の買取について
残念ながら、北村武資氏は2022年にお亡くなりになられました。
生前に作られた帯は今もなお人気が高く、重要無形文化財保持者でもあるため、市場でも高額で取引されるものも珍しくありません。
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