- 切手
- 2024.11.14
コレクター必見!中国切手「斉白石作品選(T44)」の全貌とデザインを徹底解説
中国近代美術史に燦然と輝く巨匠、「斉白石(せいはくせき)」。
元々は大工として生計を立てていた彼が、独学で絵画の道を極め、90年を超える生涯をかけて中国画に革命を起こしたことは、あまりにも有名です。彼の作品は、日本でも多くの人々に愛され、掛軸などを通して親しまれています。
斉白石の真の偉大さは、どこにでもあるような日常の風景や動植物の中に、誰もが見過ごしてしまうような美しさを見出し、生命力あふれる筆致で表現した点にあります。彼の作品は、まるで時代を映し出す鏡のように、当時の中国文化や風俗を生き生きと伝えているのです。
今回ご紹介するのは、そのような斉白石の代表作の数々を精緻に再現した「斉白石作品選切手」と「斉白石作品選小型シート」。中国で発行された数量限定の貴重な切手です。
当記事では、これらの切手が誕生した背景、全デザインの詳細解説からコレクター必見の市場価値まで、「斉白石切手」の魅力を余すところなくお伝えします。
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目次
- 1 「斉白石作品選切手」とは?
- 2 「斉白石作品選切手」の種類とデザイン(全16種類)
- 2.1 1.ボタン(額面4分、発行枚数1,000万枚)
- 2.2 2.リスとブドウ(額面4分、発行枚数1,000万枚)
- 2.3 3.カニと酒(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.4 4.オタマジャクシ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.5 5.ひよこ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.6 6.ハス(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.7 7.紅梅(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.8 8.カワセミ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
- 2.9 9.ヒョウタン(額面10分、発行枚数500万枚)
- 2.10 10.秋の声(額面20分、発行枚数500万枚)
- 2.11 11.藤(額面30分、発行枚数200万枚)
- 2.12 12.菊(額面40分、発行枚数200万枚)
- 2.13 13.エビ(額面50分、発行枚数200万枚)
- 2.14 14.レイシ(額面55分、発行枚数200万枚)
- 2.15 15.白菜とキノコ(額面60分、発行枚数200万枚)
- 2.16 16.モモ(額面70分、発行枚数200万枚)
- 3 斉白石作品選 小型シート「祖国万歳」とは?
- 4 「斉白石作品選切手」の市場価値について
「斉白石作品選切手」とは?
中国切手の中でも、とくに人気が高い「斉白石作品選切手」。
1980年に中国で発行されたこの切手は、中国近代美術を代表する巨匠、「斉白石(1864-1957)」の傑作の数々を精緻に再現した、コレクター垂涎のアイテムです。
全16枚のセットには、ボタン・リスとブドウ・カニ・ひよこ・ハスなど、 斉白石の代表的な作品がずらりと並びます。
さらに、このシリーズには「祖国万歳」と題された小型シートも含まれており、 斉白石の愛国心と中国の文化的背景を象徴する作品となっているのが特徴です。
なぜ「斉白石作品選切手」は発行されたのか?
「斉白石作品選切手」が発行された1980年当時、中国は改革開放政策を進め、国際社会とのつながりを強めようとしていました。
そのような中、中国が誇る偉大な芸術家「斉白石」の作品を切手として発行することは、中国の文化を世界にアピールする絶好の機会だったのです。
斉白石の芸術は、伝統的な中国画の技法を継承しながらも、そこに独自の表現を加え、自然の生命力や人間の感情を鮮やかに描き出しています。
彼の作品は、中国国内だけでなく、世界中の人々を魅了し、高い評価を得ていたのです。
そのような背景もあり、「斉白石作品選切手」が発行されました。
斉白石はどのような人物?
貧しい農家に生まれ、27歳まで大工として働いていた斉白石。
彼が絵画の道に進むきっかけとなったのは、偶然出会った絵手本「芥子園画伝(かいしえんがでん)」でした。
独学で絵を学び、山水画・人物画・詩文・書道と、あらゆる芸術分野をマスターしていく姿は、まさに努力の天才といえるでしょう。
50代で北京に移り住んでからは、画風を大胆に変え、晩年には「衰年変法」と呼ばれる独自のスタイルを確立。
伝統的な技法と斬新な表現を融合させた、力強く生命力あふれる作品で、中国画壇に革命を起こしたのです。
斉白石の名言「妙在似与不似之間」
斉白石は、花鳥虫魚を題材とした作品を得意としていました。
中でも、斉白石の描く「エビ」は、まるで生きているかのような躍動感で、他の追随を許しません。
実際にエビを飼育し、その生態をじっくり観察したからこそ生まれた表現力なのです。
また、「妙在似与不似之間(妙は似て非なるにあり)」という彼の言葉も有名です。
この言葉は、「ただ似せるだけではつまらない。かといって、まったく似ていなくても意味がない。真の芸術は、その間の絶妙なバランスにある」という、彼の芸術に対する深い洞察を表しています。
晩年には「人民芸術家」の称号を贈られ、国際平和賞を受賞するなど、世界的な評価を獲得した斉白石。
彼の偉大な生涯と作品を称える「斉白石作品選切手」は、今もなお多くの人々に愛され続けています。
「斉白石作品選切手」の種類とデザイン(全16種類)
「斉白石作品選切手」は、縦長のユニークな形状が目を引く切手です。
全16種類もの切手が、「1次発行分」と「2次発行分」に分けて発売されました。
実は、2次発行分の8種類の切手は、当初3月25日に発行予定でしたが、5月20日に延期されたというエピソードがあります。
「1次発行分」と「2次発行分」に分類した一覧表は、以下のとおりです。
▼1次発行分 (全8種類)
・ボタン
・リスとブドウ
・カニと酒
・オタマジャクシ
・エビ
・レイシ
・白菜とキノコ
・モモ
▼2次発行分 (全8種類)
・ひよこ
・ハス
・紅梅
・カワセミ
・ヒョウタン
・秋の声
・藤
・菊
続いて、切手のデザインテーマと額面、発行枚数は以下のとおりです。
▼全16種類
1.ボタン(額面4分、発行枚数1,000万枚)
2.リスとブドウ(額面4分、発行枚数1,000万枚)
3.カニと酒(額面8分、発行枚数2,000万枚)
4.オタマジャクシ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
5.ひよこ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
6.ハス(額面8分、発行枚数2,000万枚)
7.紅梅(額面8分、発行枚数2,000万枚)
8.カワセミ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
9.ヒョウタン(額面10分、発行枚数500万枚)
10.秋の声(額面20分、発行枚数500万枚)
11.藤(額面30分、発行枚数200万枚)
12.菊(額面40分、発行枚数200万枚)
13.エビ(額面50分、発行枚数200万枚)
14.レイシ(額面55分、発行枚数200万枚)
15.白菜とキノコ(額面60分、発行枚数200万枚)
16.モモ(額面70分、発行枚数200万枚)
ここからは、上記「斉白石作品選切手」の詳細について、それぞれ詳しく解説します。
1.ボタン(額面4分、発行枚数1,000万枚)
中国文化において「花の王」と称えられるボタン。
その鮮やかな赤色の花が、画面いっぱいに咲き誇る様子を描いた力強いデザインです。
古くから、富や繁栄の象徴として愛されてきたボタン。
斉白石は、その豊かさと豪華さを、鮮やかな色彩と力強い筆致で表現し、花びら1枚1枚に生命を吹き込みました。
とくに、赤色の大胆な使い方は、伝統的な中国画の技法とは一線を画す、斉白石ならではの特徴です。
彼はボタンを描く際に、単なる美しさだけでなく、大地のエネルギーを花に宿らせることを意識していたといわれています。
この作品からは、斉白石が自然への畏敬の念と、生命に対する深い愛情を抱いていたことを感じ取れます。
2.リスとブドウ(額面4分、発行枚数1,000万枚)
たわわに実ったブドウの房と、それを美味しそうに見つめる愛らしいリスたち。
枝に絡まるツル、葉の隙間から顔をのぞかせるリスの表情、そして瑞々しいブドウの実。
斉白石の繊細な筆致が、生き生きとした自然の情景を描き出しています。
動物の描写に長けていた斉白石。
この作品でも、リスの躍動感あふれる姿と、ブドウの房の重みが絶妙なバランスで表現されています。
彼は、対象を注意深く観察することを大切にしていました。
葉の1枚1枚、リスの毛並みの1本1本まで、丁寧に描かれているのは、彼の観察眼の賜物といえるでしょう。
計算された構図と相まって、画面全体に生命力があふれています。
3.カニと酒(額面8分、発行枚数2,000万枚)
真っ赤に茹で上がったカニが4匹、赤いロウソクが1本、そしてお酒の壺。
一見すると、ただの静物画のように見えますが、実は深い意味が込められた作品です。
この4匹のカニは、当時中国で権力を握っていた「4人組」を象徴しているといわれています。
「4人組」は、文化大革命を引き起こした政治グループで、多くの人々に苦しみを与えました。
斉白石は、彼らが失脚し、もはや権力を持たなくなったことを「茹でられたカニ」になぞらえて、風刺しているのです。
さらに、斉白石はこの作品に、「カニが皿に満ち、酒が壺に満ちる。君が飲まぬならば、なんと愚かなことか」という言葉を添えました。
一見すると、お酒を勧め、楽しい宴席を表現しているようですが、実は「せっかく悪者がいなくなったのだから、今こそ自由に楽しもう」という、痛烈な社会批判が隠されているのです。
斉白石は、生涯を通して多くのカニの絵を描いており、その中でもこの「4匹のカニの構図」はとくに有名です。
シンプルな構図の中に、複雑な社会情勢と、それに対する斉白石の鋭い批判精神が凝縮されている、奥深い作品といえるでしょう。
4.オタマジャクシ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
無数のオタマジャクシが、岩間から流れ出る清流の中を、元気に泳ぎ回っています。
この作品は、「蛙声十里出山泉(あせいじゅうりしゅっさんせん)」という詩句を絵画で表現した、斉白石の独創性が光る1枚です。
「蛙声十里出山泉」は、清代の詩人「査慎行」の詩の一節で、「蛙の鳴き声が十里先まで響き渡る山の泉」という意味です。
作家・老舎からこの詩句を題材に絵を描くことを依頼された斉白石は、蛙の鳴き声という「音」を、どのように絵画で表現するべきか、深く悩んだといいます。
そして、彼が導き出した答えが、このデザインなのです。
画面には、鳴き声をあげる蛙は一匹も描かれていません。しかし、生命力あふれるオタマジャクシたちが、やがて蛙へと成長し、力強い鳴き声を響かせる様子が見る人の心に鮮やかに浮かび上がってきます。
斉白石の巧みな表現力によって、音のない絵画から、蛙の鳴き声が聞こえてくるような、不思議な感覚を味わえる1枚です。
5.ひよこ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
斉白石が幼少期に見て育てた「ひよこを題材」にした作品です。
ふわふわとした産毛と愛らしい仕草が、まるで生きているかのようなひよこの姿は、見る人の心を和ませます。
斉白石は貧しい農家に生まれ、幼い頃から家畜の世話をしていました。その中で育まれた観察眼と、卓越した筆遣いが、このデザインの生命力あふれる表現につながっています。
ひよこの柔らかな産毛は、彼の繊細な筆致によって見事に表現されており、まさに芸術の域に達しているといえるでしょう。
この作品からは、幼い頃から自然と触れ合い、その美しさに心を動かされていた斉白石の感性が伝わってきます。
6.ハス(額面8分、発行枚数2,000万枚)
水面から力強く伸びる茎、その先に大きく開いたハスの花。
鮮やかなピンクの花びらと、瑞々しい緑の葉が、見る人の目を奪います。
斉白石は、伝統的な題材であるハスを、独自の視点と技法で描き出しました。
墨の濃淡だけで表現された葉は、まるで風に揺れているかのような生命力を感じさせます。
花びらの繊細な曲線、葉脈の細やかな描写など、細部まで丁寧に描かれたハスからは、斉白石の卓越した観察眼と技術が伺えます。
古くから中国で「高潔の象徴」とされてきたハス。
斉白石の描くハスは、その象徴性を超え、生命の力強さと自然の美しさを力強く表現しています。
7.紅梅(額面8分、発行枚数2,000万枚)
冬の寒空に、凛と咲く紅梅。
力強い枝から伸びた繊細な花びらが、見る人の心を惹きつけます。
斉白石は、梅の花を生涯にわたり描き続けました。
この作品では、力強い墨線で描かれた枝と、繊細な筆致で表現された花びらのコントラストが、見事な調和を生み出しています。
余白を活かした大胆な構図は、「衰年変法(晩年の画風の変革)」と呼ばれる時期の斉白石の特徴をよく表しています。従来の伝統にとらわれず、自由な発想で新しい表現を追求した彼の革新的な精神が、この作品にも息づいているのです。
力強さと繊細さ、相反する要素が見事に融合したこの紅梅の絵は、見る人に春の訪れを感じさせるとともに、力強く生きる生命の美しさを伝えています。
8.カワセミ(額面8分、発行枚数2,000万枚)
「水辺の宝石」と呼ばれる、カワセミの美しい姿が鮮やかな色彩で描かれています。
斉白石は、鋭い観察眼でカワセミの特徴を捉え、繊細な筆致で生き生きと描写しています。
羽根の1枚1枚と、すらりと伸びた体と獲物を狙う鋭い眼差し。
まるで、今にも動き出しそうなカワセミの姿からは、斉白石の卓越した描写力と、自然に対する深い愛情が感じられます。
切手上部にはカワセミ、下部にはエビが配置され、対比をなす構図がとられています。
これは、カワセミがエビを捕食する瞬間を捉えたもの。
自然界の食物連鎖を巧みに表現することで、カワセミの存在感がより際立っています。
斉白石は、一瞬の輝きを永遠に留めるかのように、カワセミの美しさと力強さを、見事に描き出しました。
9.ヒョウタン(額面10分、発行枚数500万枚)
中国の伝統的な生活道具であるヒョウタンが、斉白石の筆によって、芸術作品へと昇華しました。
シンプルな構図ながら、ヒョウタンの滑らかな質感と形状が、見事に表現された1枚です。
熟練の筆致で描かれたヒョウタンの表面は、まるで本物のように生き生きとしています。
ツル(蔓)の曲線や葉の配置も計算されており、画面全体にリズムと調和を生み出しています。
中国では、ヒョウタンは豊穣(ほうじょう)や子孫繁栄の象徴として、古くから親しまれてきました。また、道教の仙人の持ち物としても知られ、長寿や不死の象徴でもあります。
斉白石の描くヒョウタンは、こうした伝統的な象徴性を踏まえながらも、自然の恵みへの感謝、そして生命の力強さを力強く表現しています。
10.秋の声(額面20分、発行枚数500万枚)
秋の到来を告げるかのような、繊細なタッチで描かれた草花。
斉白石が描いた「秋の声」は、秋の情景を題材とした1枚です。
自然の移ろい、とくに秋の持つ独特の情感を愛した斉白石。
彼の作品には、秋の風景を描いたものが多く存在します。この「秋の声」も、その1つです。
風にそよぐ草花からは、まるで秋のささやきが聞こえてくるよう。視覚的な美しさだけでなく、聴覚までも刺激するような、深い芸術性を感じさせます。
斉白石は「絵の中に音あり」という考えを大切にしていました。
まさにこの作品は、彼のその理念を体現した、傑作といえるでしょう。
11.藤(額面30分、発行枚数200万枚)
春の息吹を告げる、優美な藤の花。
見事に咲き誇る紫色の花房が、見る者を魅了するのが「藤」のデザインです。
斉白石が描いたこの作品は、優雅に垂れ下がる藤の花房を、繊細な筆致で表現した傑作です。
斉白石は藤の花を描く際、実物を注意深く観察し、花房の重なりや、風に揺れる様子を写実的に描写しました。この切手のデザインは、藤の花が持つ特有の美しさと生命力が、見事に表現されているといえるでしょう。
咲き誇る藤の姿は、まるで春の到来を祝うかのよう。
一瞬の美しさを永遠に留めようとした、斉白石の想いが伝わってくる1枚です。
12.菊(額面40分、発行枚数200万枚)
「延年酒」の文字が添えられた、力強くも美しい菊の花がデザインされています。
斉白石によるこのデザインは、「菊酒寿人」という題が示すように、菊の持つ生命力と高貴さを称えています。
中国では古来より、菊は「長寿を象徴する花」として愛され、菊花酒は「不老不死の霊薬」とされてきました。
この作品においても、そうした伝統的な意味合いを踏まえながら、菊の花が持つ気品と生命力が、繊細な筆致で表現されています。
重なり合う花びら、巧みに配置された葉。
計算し尽くされた空間構成は、円熟期を迎えた斉白石の卓越した技量を余すところなく示しています。
13.エビ(額面50分、発行枚数200万枚)
斉白石の代名詞ともいえるモチーフ、エビを描いた1枚です。
斉白石は、完璧なエビの姿を追求するため、生きたエビを水槽で飼い、その生態を長年観察し続けました。
その徹底した観察眼が生み出した、透明感のある体、そして今にも動き出しそうな躍動感。
他の追随を許さない、まさに斉白石ならではの表現です。
墨の濃淡だけで、水中のエビの動きを巧みに描き出す技法は、彼の卓越した技術の証といえるでしょう。
エビをテーマにした作品で、最も高い評価を得ている斉白石。
この作品にも、彼の類まれな才能と情熱が、余すところなく発揮されています。
14.レイシ(額面55分、発行枚数200万枚)
たわわに実ったレイシ(ライチ)を描いた1枚です。
果実の丸みと、独特の表面の質感が、繊細な筆致で表現されています。
斉白石は、身近な果物や野菜を題材にすることを好み、それらを芸術へと昇華させることに長けていました。
この作品でも、レイシの鮮やかな赤色と豊かな形を忠実に再現することで、収穫の喜びと自然の恵みが見事に表現されています。
中国では、レイシは縁起の良い果物として、繁栄と幸福の象徴とされています。
この切手には、人々に豊かさと幸運をもたらしたいという、斉白石の願いが込められているのかもしれません。
15.白菜とキノコ(額面60分、発行枚数200万枚)
斉白石は、日常的な野菜や植物を題材に、その中に潜む美しさや生命力を表現することに長けていました。
この切手のデザインにおいても、「白菜とキノコ」という、ごくありふれた食材が、彼の筆によって芸術へと昇華されています。
瑞々しい白菜の葉の重なりは、水墨の濃淡を巧みに使い分け、奥行きと立体感を生み出しています。一方、繊細なキノコの傘は、細やかな筆致で描かれ、その質感の違いが見事に表現されているのです。
シンプルな構図ながら、白菜とキノコの対比と水墨画の奥深い表現技法によって、見る者を惹きつける魅力的な1枚です。
16.モモ(額面70分、発行枚数200万枚)
瑞々しいモモ(桃)と、生き生きとした枝葉が印象的な作品です。
中国では、モモは古来より「不老不死」や「長寿の象徴」として、人々に愛されてきました。
斉白石は、この切手のデザインで、そうした伝統的な意味合いを踏まえつつ、モモが持つ生命力そのものを力強く表現しています。
熟したモモの表面に生えた産毛のような質感、葉の表面に光る艶やかさ。このような細部まで、彼の鋭い観察眼と卓越した筆致によって、見事に描き出されているのが特徴です。
また、余白を効果的に使うことで、モモの存在感が際立ち、画面全体に清々しさと静寂が広がっています。
まるで、生命力あふれるモモが、悠久の時の中で静かに息づいているかのような、深い感動を覚える1枚です。
▼中国切手「斉白石作品選」の詳細
・発行日:1980年1月15日(1次)
・発行日:1980年5月20日(2次)
・額面:4分~70分
・切手デザイン:全16種類
・発行枚数:200万枚~2,000万枚
・編号:T44
斉白石作品選 小型シート「祖国万歳」とは?
― 斉白石の愛国心と芸術魂が凝縮された、珠玉の小型シート ―
中国切手「斉白石作品選」の小型シートは、「祖国万歳」をテーマに、斉白石の傑作と、彼への敬意を込めた肖像画が組み合わされた、特別な1枚です。
当初は、1980年3月25日に発行予定だったものの、諸事情により同年5月20日に延期され、その登場が待ち望まれていました。
シート右半分を占めるのは、斉白石自身の手による「祖国万歳」です。
力強く咲き誇る花々は、祖国への深い愛と、その繁栄を願う気持ちが込められています。
晩年まで中国共産党への支持を表明し続けた斉白石の、揺るぎない愛国心と情熱が、鮮やかな色彩と力強い構図からあふれ出ているかのようです。
一方、左半分には、現代中国を代表する画家「范曾(はんそ)」による、「斉白石素描像」が配置されています。
わずかな線で描かれた肖像画からは、斉白石の温かい人柄と90年余の人生で培われた深み、そして芸術家としての風格が伝わってきます。
シートには、「斉白石の生涯」と「芸術的功績を称える説明文」も添えられているのが特徴です。
中国伝統美術に革新をもたらし、現代中国美術の礎を築いた彼の偉大さを、再認識させてくれます。
この小型シートは、斉白石の作品と范曾の肖像画を通して、中国の芸術文化への情熱と誇りを力強く表現した、まさに逸品と呼ぶに相応しいデザインです。
▼中国切手「斉白石作品選小型シート」の詳細
・発行日:1980年5月20日
・額面:2元
・切手デザイン:全1種類
・発行枚数:25万枚
・編号:T44m
「斉白石作品選切手」の市場価値について
― 芸術と希少性が織りなす、高まるコレクター人気 ―
「斉白石作品選切手」は、その芸術的価値と希少性から、発行当初からコレクターたちの熱い視線を集めてきました。
とくに、発行枚数の限られた「高額面切手」や「小型シート」は、時を経るごとにその価値を高め、現在では高値で取引される機会も増えています。
シリーズ全体で見ると「田型切手単体」よりも、「小型シート」の方が市場価値が高くなる傾向にあります。
理由としては、小型シートの発行枚数が少ないため、希少性という点でコレクターから高い評価を受けているためです。
個々の切手の中では、「菊」「白菜とキノコ」「モモ」が、とくに人気を集めています。
しかし、コレクターの方は16種すべてが揃った状態を好む傾向があるため、切手買取のご利用を検討される際は、まとめて査定に出されることをオススメします。
斉白石は、「生涯で4万点以上の絵画」「千首以上の詩」「3千以上の印章」を制作した、まさに多才な芸術家です。
彼の作品は中国国内だけでなく、国際的にも高く評価されています。
それを裏付けるように、斉白石は1958年、没後わずか1年でソ連の切手に描かれ、外国の切手に登場した最初の中国人となりました。
「斉白石作品選切手」と「斉白石作品選小型シート」は、中国近代美術史における重要な画家の業績を伝える貴重な文化資料としての価値も有しています。
もしお手元に「斉白石作品選切手」をお持ちで、実際の価値をお知りになりたい方、または売却をご検討されている方は、ぜひ「買取福ちゃん」にご相談ください。
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