中国切手「労・農・兵は大学へ行く」について|文化大革命が生んだ教育改革と激動の1976年を振り返る
1976年、文化大革命下の中国で発行された「労・農・兵は大学へ行く」切手セットは、当時の社会と教育の変革を象徴する貴重なコレクターズアイテムです。
労働者、農民、兵士が大学教育を受ける権利を勝ち取った歴史的瞬間を捉えたデザインは、中国現代史を語る上で欠かせない存在となっています。
当記事では、この中国切手が発行された背景や各デザインに込められた意味、そして買取市場における評価について詳しく解説します。中国切手収集の初心者から上級者まで、必見の内容です。
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目次
文化大革命が生んだ「労・農・兵は大学へ行く」切手とは
「労・農・兵は大学へ行く」切手は、1976年に発行された中国の特殊切手であり、文化大革命(1966年~1976年)という激動の時代における、中国の高等教育改革を象徴するものです。
文化大革命の嵐の中で、中国の大学は混乱を極め、1966年から1970年まで入学試験が中止されました。
しかし、1970年6月に「毛沢東」の指示のもと、北京大学と清華大学で試験的な学生募集が再開。従来の入学試験制度は廃止され、労働者、農民、兵士の中から学生を選抜する「労農兵の大学入学」政策が導入されました。
この新しい教育制度は、文化大革命の成果として喧伝され、社会主義建設に向けた新たな一歩として位置づけられました。
「労・農・兵は大学へ行く」切手は、まさにこの歴史的転換点を記念して発行されたものであり、中国現代史を理解する上で重要な資料といえるでしょう。
大学生活のストーリーを伝える「労・農・兵は大学へ行く」切手のデザインと5つのテーマ
▼中国切手「労・農・兵は大学へ行く」の詳細
・発行日:1976年9月6日
・額面:8分(※100分=1元)
・切手デザイン:全5種類
・発行枚数:各800万枚
・編号:T18
「労・農・兵は大学へ行く」切手は、全5種類のデザインで構成されたセットで、それぞれの切手が大学生活の異なる側面を描き出しています。
額面はいずれも8分で、発行枚数は各デザイン800万枚と統一されています。
✔ 高らかに大学へ(額面8分、発行枚数800万枚)
✔ 教師と学生の学習(額面8分、発行枚数800万枚)
✔ 労働教師の教育(額面8分、発行枚数800万枚)
✔ 科学実験(額面8分、発行枚数800万枚)
✔ 卒業し農村へ帰る(額面8分、発行枚数800万枚)
高らかに大学へ
「高らかに大学へ」の切手は、文化大革命下の「労農兵の大学入学」政策を象徴するデザインです。大きく開かれた大学の門を、労働者・農民・兵士たちが希望に満ちた表情でくぐり抜け、新たな学び舎へと足を踏み入れています。
門の両側に描かれているのは、教職員や在校生たちが集い、新入生を歓迎している様子です。太鼓やシンバル・笑顔・拍手喝采の描写が、お祭り騒ぎのような高揚感を醸し出しています。
上部に見られるのは、「教育要革命(教育に革命を)」「熱烈歓迎工農兵学員上大学(労農兵学員の大学入学を熱烈歓迎)」のスローガンを掲げた横断幕と、はためく赤い旗です。これらの要素が、この切手に文化大革命の熱気と、教育改革への情熱を吹き込んでいます。
このデザイン全体から、労働者・農民・兵士たちが大学教育を受ける権利を勝ち取ったことへの誇りと喜び、そして新しい時代への期待感が力強く伝わってきます。
教師と学生の学習
「教師と学生の学習」の切手は、文化大革命期の教室風景を活写しています。
教室の壁には「毛主席の語録」が掲げられ、「工人階級(労働者階級)はすべてを指導しなければならない」という言葉が刻まれています。テーブルの上には、「毛沢東選集」や「紅旗」といった革命思想を記した書籍やパンフレットが置かれ、当時の学習内容を物語っているのです。
中国での切手テーマ名「革命理論が進路を指し示す」が示すように、毛沢東思想が教育現場に深く浸透していたことがわかります。
教壇に立つのは、労働者の作業着を身につけた「工宣隊(工場労働者による宣伝隊)」のメンバーです。彼は手に持った本を読み上げ、学生たちと熱心に議論を交わしています。
窓の外には満開の桃の花が咲き誇り、春の息吹を感じさせます。中国では、桃の花が春の象徴です。この切手からも、日本と中国の文化の違いを読み取れます。
春の風がカーテンを揺らす様子は、教室内の静かな緊張感と外の穏やかな自然との対比を際立たせています。
この切手は、毛沢東思想が教育の中心に据えられた文化大革命期の学習風景を鮮やかに描き出し、当時の中国社会における思想統制の様子を伝えているのです。
労働教師の教育
「労働教師の教育」の切手は、「開放教育」と「実践的学習」という理念を体現したデザインです。
建設現場を舞台に、経験豊富な労働者が教師となり、若い学生たちに実践的な知識を伝えています。学生たちは真剣な眼差しで労働者の説明に耳を傾け、熱心にノートを取っています。
この切手は、教室での学習だけでなく、実際の労働現場での体験を通して学ぶことの重要性を訴えているのです。労働者が教師となり、直接指導にあたる姿は、「労働者階級が教育を指導する」という文化大革命期の教育方針を象徴しています。
その教育方針は、当時の中国社会における教育改革の理念を反映しているといえるでしょう。
科学実験
「科学実験」の切手は、労農兵学員たちが科学研究に情熱を燃やす姿を捉えています。
中央に描かれているのは、当時最先端だった電子計算機が配置され、労農兵学員たちがデータ解析に取り組む様子です。彼らの表情は真剣そのもので、科学的な問題解決への意欲が伝わってきます。
注目すべきは、電子計算機の前に立つ2人の女性の姿です。1人は一般的な服装ですが、もう1人は人民解放軍の軍服「65式軍服」を着用しており、彼女が軍出身の学生であることを示しています。
背景に描かれているのは、最新の科学機器です。当時の中国における、科学技術の発展が強調されています。また、明るく清潔で整理された実験室の環境は、研究に打ち込むための理想的な空間を表現しています。
この切手は、文化大革命下においても科学技術の発展を重視し、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが協力して研究に取り組む姿を描き出すことで、当時の中国の教育改革の理想を表現しているのです。
卒業し農村へ帰る
「卒業し農村へ帰る」切手には、大学卒業後の労農兵学員の新たな旅立ちが描かれています。
中央に描かれているのは、荷物を背負い、故郷の農村へと向かう女性卒業生。その表情からは、学業を終えた達成感と、これから農村で活躍するという使命感が伝わってきます。
背景に描かれているのは、広大な農村の風景が広がり、農民たちが旗を振って卒業生を熱烈に歓迎する様子です。横断幕には「歓迎大学卒業生回乡当農民(大学卒業生の農民としての帰郷を歓迎する)」の文字が躍り、卒業生への期待と温かい歓迎の気持ちが伝わってきます。
この切手が象徴するのは、労農兵学員が大学で得た知識と技術を活かし、農村に戻って地域社会の発展に貢献する姿です。文化大革命期において、卒業後の進路として農村への帰還が奨励された背景を伝える、貴重な資料といえるでしょう。
「労・農・兵は大学へ行く」切手の価値と高価買取のポイント
「労・農・兵は大学へ行く」切手は、文化大革命期の中国社会と教育改革を色濃く反映した、歴史的価値の高いコレクターズアイテムです。
各デザイン800万枚と比較的多く発行されましたが、40年以上が経過した現在、未使用の切手は希少性が高く、コレクターの間で人気を集めています。状態が良ければ、額面以上の買取価格も期待できるでしょう。
とくに、5種類すべてが揃った未使用の完品セットは、高値で取引される傾向にあります。
高価買取のポイントは、以下の3点です。
1.【未使用であること】使用済みやヒンジ跡のある切手は、価値が下がります
2.【汚れや破損がないこと】切手の状態は査定額に大きく影響します
3.【消印がないこと】 初日カバーを除き、消印のない切手の方が高く評価されます
もし、お手元に「労・農・兵は大学へ行く」切手をお持ちでしたら、一度査定に出してみてはいかがでしょうか。
思わぬ高額査定につながるかもしれません。
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まとめ
1976年の中国は、文化大革命の終焉を迎え、激動の時代でした。
周恩来の死去・天安門事件・唐山大地震・毛沢東の死去・四人組(江青・張春橋・姚文元・王洪文)の逮捕など、歴史的転換点となる出来事が相次いだのです。
このような混乱の中でも、教育革命は進行していました。「労農兵の大学入学」政策は、従来のエリート主義的な教育システムを覆し、多くの労働者・農民・兵士に高等教育の門戸を開いたのです。
この政策は、学術的な基準や専門性の軽視といった批判も招きましたが、階級の壁を越えて教育を受けられるという理想は、多くの人々に希望を与えました。
また、実践経験を重視する姿勢は、理論と実践の結合という新たな教育観を生み出すきっかけにもなったのです。
1976年9月6日に発行された「労・農・兵は大学へ行く」切手は、まさにこの激動の時代と教育革命の理想を反映しています。5枚の切手は、労働者・農民・兵士の学生たちが大学で学び、社会に貢献する姿を描き、当時の中国が目指した教育のあり方を鮮明に伝えています。
社会主義建設における教育の重要性を強調し、歴史的な転換期を記録したこの切手は、文化大革命期の中国の政治・社会・教育を理解する上で、かけがえのない資料といえるでしょう。