三味線と三線の違い|難易度や選び方も解説
三味線と似た伝統的な和楽器の1つに、沖縄に伝わる3弦の楽器「三線(さんしん)」があります。名前や見た目も似ているため、三味線が好きな方の中には「三味線と三線の具体的な違いを知りたい」という方もいらっしゃるでしょう。
当記事では、三味線と三線の違いを、「大きさ」「構造」「材質」「演奏姿勢」「演奏の難易度」の5つのポイントにわけて解説いたします。
三味線や三線を弾いてみたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
三味線とは?
三味線とは、しなやかで迫力のある音を奏でる和楽器のことです。
3本の弦を撥(ばち)や指で弾いて音を奏で、勘所(かんどころ)というポイントを手で押さえて音階を表現します。
三味線のルーツは諸説ありますが、現在のような形状に落ち着いたのは江戸時代といわれています。
歌舞伎や人形浄瑠璃など、当時の人々に人気があった芝居の音楽を奏でる楽器として親しまれました。
その後、三味線の演奏ジャンルは多岐にわたり、「長唄」「小唄」「民謡」「現代楽曲」など幅広く使用されています。
なお、三味線の中には「太棹」「中棹」「細棹」というように、大きさの異なるさまざまな種類があります。
また、下記の記事では「三味線の種類」についてさらに詳しく記述しておりますので、ぜひご覧ください。
▶︎ 三味線の種類|種類ごとの演奏ジャンル・三味線の選び方も解説
三線とは?
三線(さんしん)とは、沖縄に古くから伝わる伝統のある弦楽器のことです。
見た目が三味線に似ているため、「沖縄三味線」と呼称されることも。
沖縄がまだ琉球王国であった時代に中国から伝わったとされ、当初は宮廷音楽を彩る楽器として親しまれました。
次第に庶民の間にも普及し、村の行事や祭りなどで使用されています。
三線の3本の弦は短く太めで、人差し指に爪を付けたりピックを使用する演奏スタイルです。
太く柔らかい音色が三線の特徴であり、その音色はさまざまなアーティストに愛され、沖縄に伝わる楽曲以外のジャンルにも用いられています。
三線は主に沖縄の那覇市で製造され、2018年には経済産業大臣から「日本の伝統工芸品」に指定されました。
三味線と三線の違い
三味線と三線はよく似ていますが、2つの弦楽器の間には大きさや構造をはじめとした、さまざまな違いがあります。
ここでは、三味線と三線の異なる点について詳しく解説いたします。
大きさ
三味線の大きさは全長90~100cm程度で、三線の大きさは全長76~80cm程度です。
三味線と三線を比べると、三味線のほうが大きいことがわかります。
また、重さについては三味線が2~3kg程度、三線が1kg程度です。三味線のほうが大きい分、重さも上回ります。
ただし、三味線と三線にはそれぞれいくつか種類があるため、種類によって大きさや重さは異なります。
構造
2つの弦楽器の基本的な設計はほとんど変わりません。しかし、三味線と三線では構造の上で異なる点が3つあります。
1点目は、三味線は分解ができ、三線は分解できないことです。
三味線には、つなぎ目が1つの「二つ折り」やつなぎ目が2つの「三つ折り」、つなぎ目が5つの「六つ折り」などがあります。対象的に、三線には基本的につなぎ目がないため、分解はできません。
しかし、現在では「つなぎ三線」という棹を3つに分解できる三線もあります。
2点目は、「さわり」の存在です。
さわりとは三味線特有の構造であり、第1弦が少しだけ突起部分に触れることで、倍音(約2倍の振動)を生み出す仕組みを指します。
突起の長さはネジで調節可能です。
そして、三線にはさわりの仕組みがありません。
3点目は、調弦に使う糸巻きの位置の違いです。
3本の弦のうち、2本の糸巻きの位置が反対に付けられています。
材質
三味線と三線は、胴(どう)や棹(さお)の材質に違いがあります。
三味線の胴には犬皮(けんぴ)や猫皮(よつかわ)などが張られているのに対し、三線の胴に使われているのは蛇皮(ニシキヘビの皮)です。
ただし、動物愛護の観点やワシントン条約を理由に、現在は三味線・三線ともに合成皮(人口皮)が使用されることも。
また、棹の材質も異なります。
三味線の棹に使われる材質は、紅木(こうき)や花梨(かりん)という木材です。一方、三線の棹には、八重山黒木(やえやまくろき)やユシギという木材が使用ています。
三味線では紅木、三線では八重山黒木が、それぞれ棹の材質として最高級とされています。
演奏姿勢
三味線と三線は演奏する姿勢にも違いがあります。
多くの場合、三味線は正座や椅子に座った状態で演奏するため、どちらの場合も背筋はしっかりと伸ばしましょう。
三味線は立って演奏することもありますので、その際はギターのような肩にかけるストラップが必要です。
三線も三味線と同様に、正座や座った姿勢で演奏するのが基本です。
また、古典的な楽曲の稽古やコンクールでは、正座での演奏が求められる場合もあります。
ただし、三線は立った姿勢で演奏することも少なくありません。三線は三味線より軽いため、立って演奏する場合はストラップが不要です。
さらに、下記の「三味線の弾き方」では、三味線の姿勢についてより詳しく記述しております。ぜひご覧ください。
演奏の難易度
三味線は三線と比べると奏法が多く、演奏の難易度も高い傾向です。
三味線の構え方や音の出し方などを間違って覚えた場合、美しい音色を奏でることが難しくなります。
そのため、専門家の指導を受けたり動画をよく見たりなど、しっかりと学ぶ必要があるでしょう。
また、長唄なら「細棹」、民謡なら「中棹」、津軽三味線なら「太棹」と種類分けされています。
3種類の三味線からどれを選ぶのかも初心者には難易度が高いため、職人や販売店に相談してみるのがオススメです。
一方、三線は三味線よりも奏法や使用する道具が少なく、演奏の難易度はそこまで高くありません。そのため、弦楽器初心者でも始めやすいでしょう。
ただし、三線を演奏しながら唄う場合は難易度が少しアップします。
沖縄民謡や琉球民謡を唄うためには、現代の標準語とは大きく異なる「うちなーぐち(沖縄の言葉)」で唄う必要があるためです。
しかし、三味線で民謡や長唄を唄う場合でも、歴史的な言葉が登場することがあり、どちらも至難の業になります。
総合的に見ると、三味線と三線の演奏難易度に大きな差はないといえるでしょう。
三味線と三線はどちらを選ぶべき?
三味線か三線を始めたいと考えている場合、いくつか押さえるべきポイントがあります。
三味線と三線のどちらを選ぶべきかを考える際に、ポイントとなるのは下記の2つです。
① 好みで選ぶ
② 弾きたい曲で選ぶ
① 好みで選ぶ
三味線と三線は基本的に別の楽器であるため、「三味線で沖縄民謡を演奏する」というような兼用はできません。
2つの楽器はサイズや素材だけでなく、文化的背景そのものが異なるためです。
趣味として三味線か三線のどちらかを始めたい場合は、ご自身の好みで選ぶことをオススメします。
落語や人形浄瑠璃、歌舞伎などの和の伝統文化に興味がある方は、三味線を選ぶとよいでしょう。力強い音色を奏でる津軽三味線に魅力を感じる方にも、三味線をオススメします。
一方、沖縄・琉球民謡や沖縄のアーティストに惹かれる方は、三線を始めましょう。「沖縄の豊かな自然や文化そのものに心を動かされた」という方にも、三線がオススメです。
② 弾きたい曲で選ぶ
上記でご説明したとおり、演奏する曲によって三味線と三線を使い分ける必要があります。
そのため、弾きたい曲で三味線か三線を選ぶというのも1つの方法です。
「伝統民謡」「地唄」「長唄」「浪曲」「演歌」などを弾きたい方は三味線を選びましょう。
そして、沖縄の「伝統民謡」や「沖縄ポップス」を弾きたい方には、三線がオススメです。
下記は、三味線での演奏が有名な曲になります。
・ 勧進帳(長唄)
・ 黒田節(福岡県の民謡)
・ 千本桜(和ポップス)
また、三線で演奏できる有名な曲は下記のとおりです。
・ 島唄(沖縄ポップス)
・ 安里屋ユンタ(沖縄民謡)
・ 島人ぬ宝(沖縄ポップス)
弾きたい曲をもとに、どちらの楽器を始めるかを選んでみましょう。
まとめ
三味線と三線は同じ和楽器でありながら、「大きさ」「構造」「材質」「演奏姿勢」「演奏の難易度」などに違いがあります。
三味線とは、しなやかで迫力のある音が特徴的であり、大きさの異なるさまざまな種類があります。
そして、三線とは沖縄に古くから伝わる弦楽器であり、三味線よりもやや小さく軽いことが特徴です。
また、三線は三味線よりも奏法や使用する道具が少なく、演奏の難易度がそこまで高くありません。そのため、初心者でも始めやすい楽器といえるでしょう。
三味線と三線のどちらを選ぶか迷ったときは、ご自身の好みで選ぶか、弾きたい曲で選ぶことをオススメします。