三味線の種類|種類ごとの演奏ジャンル・三味線の選び方も解説
日本の伝統楽器として古い歴史をもつ三味線は、主に「太棹(ふとざお)」「中棹(ちゅうざお)」「細棹(ほそざお)」の3種類に分類されます。
それぞれ棹の太さや胴体の大きさも異なるため、音楽のジャンルによって使用する三味線の種類が変わることが特徴です。
当記事では、三味線の種類を「太棹」「中棹」「細棹」ごとに詳しく解説いたします。
三味線の種類ごとに適した音楽ジャンルが知りたい方や、演奏ジャンルの概要や歴史、魅力を知りたい方はぜひご覧ください。
目次
【三味線の種類】太棹(ふとざお)
太棹(ふとざお)とは、胴体を含め全体的にサイズが大きいことが特徴的な三味線であり、三味線の中でもとくに人気の高い種類です。
太棹は胴体の大きさに合わせて、胴体に張られている皮も厚くなっています。そのため、大音量で演奏できるだけではなく、音色の深みや重みも大きな魅力です。
太棹を使用すれば迫力ある演奏が可能になるため、屋外での演奏にも適しています。
なお、太棹は弾くというより、「撥(バチ)で叩く」イメージで演奏することが特徴の1つです。
太棹を使用した演奏ジャンルは、主に「津軽民謡」「義太夫(ぎだゆう)」「浪曲(ろうきょく)」の3種類があります。
以下では、それぞれの概要や歴史、魅力についてご紹介します。
津軽三味線
津軽民謡は、青森県津軽地方に伝わる民族音楽です。
明治から昭和初期にかけて、津軽地方には「ボサマ」と呼ばれる盲目の男性芸人がいました。
ボサマは「門付け(かどづけ)」という、家々や神社などを周りながら三味線を演奏し、毎日の生きる糧を得てきました。
ボサマが野外で人々の興味を引くためには、大きな音が出る楽器でなければなりません。
そこで、迫力のある音を出すために太棹を使用し、後に発達した三味線が津軽民謡で使われる「津軽三味線」といわれています。
津軽民謡の撥さばきは軽快で迫力があり、多くの人を魅了します。
また、現在の日本では習い事として親しまれているほか、海外でも高い人気を得ているのです。
義太夫
義太夫とは、江戸時代に上方(江戸時代における京都およびその周辺)で発展した、文楽(ぶんらく)で奏でられる音楽「義太夫節」のことです。
文楽とは「人形浄瑠璃」とも呼ばれる劇のことで、人形舞台の脇で語り手と三味線が作品を盛り上げます。
そして、義太夫の伴奏には太棹の義太夫三味線が用いられます。
一見すると三味線は伴奏役にも感じられますが、義太夫における三味線の役割は奥深いものです。
義太夫節の三味線は、演奏によって場面の情景を伝えたり、語り手による登場人物の語り分けを観客に伝えたりなどの役割があります。
時に語り手をリードし、語り手の声にも負けないような迫力を生み出すのです。
浪曲
浪曲とは、伴奏の三味線奏者と語り手との2人1組で演じる舞台のことです。
明治時代初期から始まった演芸の一種であり、「浪花節(なにわぶし)」とも呼ばれます。
浪曲で題材となるのは、武芸や任侠、悲恋などさまざまです。
庶民的な心情に訴える作品も多く、ジャズのセッションのような魅力も相まって、浪曲は戦前までに全盛を迎えました。
しかし、昭和時代にテレビが普及して以降、絵面が比較的地味な浪曲は衰退していき、現在ではあまり演奏されなくなっています。
【三味線の種類】中棹(ちゅうざお)
中棹(ちゅうざお)とは、人の声やほかの楽器に合わせやすい音域の三味線です。
音色の響きがよく、唄と演奏の調和が取りやすい中棹は、民謡の伴奏としても使用されてきました。
中棹は太棹に比べて大きな皮を使用せず作りやすいことから、庶民の間で普及した弦楽器です。
民謡やお祭りの伴奏など、さまざまな地域や幅広いシチュエーションで使用され、庶民の生活の中に溶け込んでいきました。
中棹が使用されるジャンルは、主に「民謡」と「地唄」です。
以下では、民謡と地唄の概要や歴史、魅力についてご紹介します。
民謡
民謡とは、日本各地の庶民の間で生まれ、唄い継がれてきた曲のことです。
現在までに生まれた民謡の数は2万曲以上ともいわれています。
民謡には、農村で生まれた五穀豊穣を願うものや、お座敷唄、祝い唄、宗教唄など、さまざまな種類があります。
曲調もゆったりしたものから寂し気な雰囲気のもの、陽気なものまで多種多様です。
一般的な民謡には、笛や太鼓、胡弓など、三味線以外にもさまざまな和楽器が使用されます。そのため、民謡に調和のとれる中棹の使用が多いのは、伴奏としての役割に適しているためでしょう。
地唄
地唄(ぢうた)は、江戸時代に上方(江戸時代における京都およびその周辺)で発達した三味線音楽です。
上方における「地元の流行歌」という意味から、地唄と呼ばれるようになりました。
日本では多くの伝統芸能が舞台とともに発展してきましたが、地唄は純粋に音楽に重点を置いているという特徴があります。
地唄には、地域の風景や繊細な心情などを表現した作品が多く、家庭内や社交場などの室内音楽として親しまれてきました。
地唄で使用される三味線は、中棹の中では棹や胴部分が大きい傾向にあります。しかし、流派によっては細棹よりもさらに小さい三味線が用いられることもあります。
いずれにしましても、地唄においては撥音を生かしたダイナミックな表現はあまり見られないでしょう。
【三味線の種類】細棹(ほそざお)
細棹(ほそざお)とは、細くて繊細な作りと軽く華やかな音が特徴的な三味線です。
細棹は三味線の中では全体的に小ぶりで、棹が細く、撥で弾くと透明感のある乾いた音がします。
音色に華やかさがあるため、舞台の演奏にも映える三味線です。
細棹は細かい撥さばきが魅力の1つとなっています。細棹は学校教材や三味線入門用の楽器としても使用されることが多いため、これから三味線を始める方にもオススメです。
細棹の三味線を使用する音楽には「長唄」があります。以下では、長唄の特徴や歴史、魅力などをご紹介します。
長唄
長唄とは、18世紀の初めに歌舞伎の音楽として生まれ、江戸を中心に発展してきた三味線音楽です。
後に歌舞伎から独立し、純粋に音楽としても楽しまれるようになりました。
歌舞伎における長唄は、お囃子(おはやし)と一緒に舞台で演奏されることが大きな特徴です。
お囃子には鼓(つづみ)などの打楽器が使用されるため、リズミカルで踊りに向いている音楽ともいえます。
歌舞伎における長唄の演奏者は、観客に姿を見せながら演奏します。
歌舞伎の演奏には舞踊の伴奏である「出囃子(でばやし)」や、芝居の情景描写などを担当する「陰囃子(かげばやし)」があり、長唄として伝承されてきたのは主に出囃子です。
そのため、長唄演奏者の中には出囃子のみに出演する方も多くいます。
【初心者向け】三味線の選び方
三味線は質や値段でもピンからキリまで存在するため、選ぶことが難しいと感じている方もいらっしゃるでしょう。
初心者の三味線の選び方としてもっとも簡単なのは、初心者用のセットを購入することです。
初心者セットには、三味線本体だけではなく三味線を弾く際に必要な撥(ばち)や駒(こま)、メンテナンスに必要な弦(げん)のスペアなども揃っています。
入門書がセットになっていることも多く、値段も比較的安価のため、「まずは三味線に触れてみたい」という方は初心者セットを試してみてはいかがでしょうか。
また、下記の記事では初心者向けの「三味線の弾き方」をわかりやすく記述しておりますので、ぜひご覧ください。
また、三味線を自身で選びたい場合は、あらかじめ定めた予算の範囲内で買える三味線から選ぶとよいでしょう。
初めてだからこそよいものに触れたいという考えもありますが、楽器は最初に買ったものを生涯使うとは限りません。
そのため、自身が無理なく購入できる範囲の三味線に絞り、ある程度の妥協を交えながら選ぶとよいでしょう。
そして、可能であれば三味線教室の先生や楽器店のスタッフに相談することがオススメです。
初心者の方が1人で三味線選びにチャレンジすると、知らぬ間に高額で質が悪い商品を購入してしまう恐れがあります。
そのため、事前に三味線の知識を持つ方の意見を得られれば、購入後に後悔する可能性を減らせるでしょう。
「購入した三味線が合わなかった」「三味線の一部が壊れてしまった」など、ご不要になった三味線は、状態によっては買取が可能です。
三味線に詳しい査定士が在籍する、「三味線買取 福ちゃん」までお気軽にご相談ください。
お電話受付時間 9:00~20:00 (年中無休※年末年始は除く)
まとめ
三味線は大きく分けて「太棹(ふとざお)」「中棹(ちゅうざお)」「細棹(ほそざお)」などの種類があり、棹の太さや胴体の大きさなどで音色が異なることが特徴です。
太棹は全体的にサイズが大きく、三味線の中でもとくに人気の高い種類です。
中棹はほかの楽器や唄に合わせやすい三味線であり、細棹は軽く華やかな音が特徴的な三味線です。
三味線を選ぶ際は、三味線本体や撥(ばち)、駒(こま)などが揃った初心者セットを試してみましょう。また、三味線教室の先生や楽器店のスタッフに相談して、予算内で選ぶことをオススメします。