三味線に使われる皮の種類|張り方・種類によって異なる音色の違いも

多くの三味線の胴には動物の皮が張られており、撥(ばち)で弦を弾くことで振動が胴に共鳴し、音が鳴る仕組みです。

三味線に用いられる皮には、猫皮、犬皮、カンガルー皮、合成皮などの種類があり、素材によって質感や厚み、音の響き方が異なります。三味線に興味がある方の中には、「代表的な皮の種類や特徴が知りたい」という方もいらっしゃるでしょう。

当記事では、三味線に使用される皮の種類をご紹介します。三味線の皮の種類や特徴について詳しく知りたい方は、ぜひご参考にしてください。

三味線の胴に皮が張られる理由

三味線の胴に皮が張られる理由

和楽器の1つとして知られる三味線の胴には、皮が張られ和太鼓のようになっています。

皮が張られている理由は、三味線の弦の音を増幅するためであり、胴の大きさと皮の張り具合によって三味線の音量が決まります。

また、音色を複雑にすることも、三味線に皮が張られる理由の1つであり、使用される皮によって三味線の音色は変化するのです。

そして、三味線は胴に皮が張られた太鼓を形作っていることから、太鼓と弦楽器を組み合わせた「打弦楽器」と呼ばれることも。

三味線に使われる皮の種類

三味線に使われる皮の種類

三味線の皮は音色や音量を左右する重要な要素の1つであり、使用される皮にはさまざまなものがございます。

ここでは、主な三味線の皮として「猫皮(よつかわ)」、「犬皮(けんぴ)」、「カンガルー皮」、「 合成皮(ごうせいひ)」の概要や特徴をご紹介します。

猫皮(よつかわ)

猫皮は四つ皮(よつかわ)とも呼ばれ、三味線の発展の礎を築いてきた素材です。

主に、長唄用の細棹(ほそざお)三味線や、地唄用の中棹(なかざお)三味線に用いられています。

猫皮の特徴は、皮の薄さや毛穴の小ささ、さらりとした感触です。

猫皮が薄ければ薄いほど、三味線の音が抜けのよい軽やかな音色になるため、「鈴を転がしたような音」とたとえられることもあります。

また、1枚の猫皮の中には厚みの異なる部分があり、厚みの差が大きいほど三味線をよく鳴らすことが可能です。

猫皮とは猫の腹部の皮を使い、1匹からは三味線1丁分の皮しか採取できないため、三味線の皮の中では比較的高価になります。

そして、猫皮は薄く繊細であるため、湿気を防ぐ和紙などでできた胴袋を使用し、演奏後は皮に付いた手汗を拭き取るといった手入れが必要です。

もし手入れを怠ると、耐久性が低下し破損する恐れがあります。

犬皮(けんぴ)

犬皮は猫皮よりも厚く、丈夫で長持ちする傾向にあります。

また、毛穴が大きく荒いため、手に吸い付くような感触です。

そのため、太棹(ふとざお)の津軽三味線は叩くように演奏することから、厚みのしっかりとした犬皮との相性がよく、犬皮の三味線は最高級品とされています。

さらに、浄瑠璃で使用される義太夫(ぎだゆう)三味線にも、犬皮が用いられることがあります。

しかし、犬皮は種類によって厚さが異なるため、重厚な音色が特徴の太棹三味線(津軽三味線)と比較すると、印象の異なる音色となるのです。

また、長唄では犬皮の三味線は稽古に使用されることが一般的です。

ただし、近年の舞台音響の設備では猫皮よりも犬皮のほうが音の通りがよい場合もあり、本番の演奏で使われることもあります。

なお、三味線の犬皮は犬の背中の部分を使っているため、犬1頭で三味線数丁分の皮を採取することが可能です。

カンガルー皮

近年、動物愛護の観点から猫皮や犬皮の入手が困難になりつつあり、将来的には供給が途切れる可能性もあります。

一方、カンガルー皮は手に入りやすい傾向です。そのため、カンガルー皮は猫皮、犬皮に代わる三味線の皮として注目されています。

カンガルー皮が入手しやすいとされる理由は、オーストラリアで生息しているカンガルーの数の多さです。

オーストラリアでは、野生のカンガルーが人口よりも多く生息している点が懸念されています。そのため、カンガルー皮をオーストラリアから日本へ輸入し、三味線の文化を守る動きが期待されているのです。

カンガルーは犬や猫と比べて体が大きい動物であるため、1頭から採取できる皮の量が多い特徴を持ちます。

犬皮よりも毛穴が小さく、感触はつるりとしています。

カンガルー皮を利用した三味線は、力強く響きやすい音色を奏でるため、稽古用・本番用のどちらとして使用しても問題ありません。また、湿気に強く丈夫である点も特徴の1つです。

合成皮(ごうせいひ)

三味線の合成皮(人工皮)は、動物愛護や耐久性を求める声に応じる形で1980年代に開発されました。

合成皮の多くは布地でできており、表面はざらざらとした凹凸があり、厚みもしっかりとしています。

合成皮で作られた三味線の音色は、天然皮と比べて余韻が少なく、音域も狭い傾向です。

伝統的な三味線演奏とは相性がよくないという見解もある一方、音色の硬さが現代風の曲とマッチするという見解もあります。

そして、合成皮には天然皮よりも熱に弱いという注意点があるものの、水分に対しては一定の耐久性を持っています。

たとえば、湿度の高い雨の日に野外で演奏することも可能です。そのため、エンターテインメント性に重点を置いて三味線を演奏する場合には、合成皮が重宝されるでしょう。

ただし、三味線奏者の多くは天然皮を使用しているため、合成皮の需要は比較的少ないことが現状です。

また、需要が少ない影響もあり、合成皮の価格は犬皮やカンガルー皮と比べても割高なことが懸念されます。

三味線の音色は皮の種類と張り方で変わる

三味線の音色は皮の種類と張り方で変わる

三味線の音色は、皮の種類と張り方で変化します。

たとえば、「合成皮を張った場合」と「天然皮を張った場合」では、音色は大きく異なります。

三味線には1つひとつ個性があり、皮の種類や張り方にこだわることで、個性を生かした音色を響かせることが可能です。

皮の張り方と音色・耐久性の関係

三味線の皮の張り方は、音色に大きな影響を与えます。

三味線特有の音色を適切に鳴らすには、それぞれの三味線の状態を見極めながら皮を張ることが重要です。

たとえば、エンターテインメント性を表現する際には、皮を破れる寸前まで強く引っ張ることで、現代的な音色をつくれます。

また、皮を強く張ると音色が単純になるため、音階の正しさを判断しやすくなります。三味線を練習する場合や、競技会に出場する場合にオススメの張り方です。

ただし、皮を強く引っ張ればその分だけ破れやすくなり、耐久性の観点からみると弱くなるため注意が必要です。

三味線奏者の求めるものによって、適切な皮の張り方は異なります。専門店や三味線職人に相談しながら、自分に合った音色を模索してみるとよいでしょう。

また、皮が破れてしまった三味線でも、状態次第では業者が買い取ってくれる場合もございます。処分してしまう前に一度、専門業者に相談してみることもオススメです。

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三味線で使われる猫皮・犬皮の調達方法

三味線で使われる猫皮・犬皮の調達方法

三味線に使用される猫皮や犬皮が、どのように調達されていたのかご存知でしょうか。

音色がよいために猫皮の三味線が大きく流行した江戸時代には、猫皮や犬皮は当時は入手しやすく、「猫捕り」というビジネスが生み出されました。

猫捕りとは、外にいる猫を捕まえて、三味線用猫皮の製造業者に流す行為です。

猫捕りは明治・大正・昭和の時代を経て1970年代まで日本に実在しましたが、1973年の動物愛護管理法の成立後、少しずつ姿を消していきました。

2023年現在の動物愛護管理法では、犬や猫などの愛護動物をみだりに殺傷した場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処されると定められています。

※出典:環境省「動物愛護管理法の概要」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/outline.html

規制によるリスクを恐れた猫捕りの減少とともに、国産の猫皮も減り代替品として中国や台湾、タイなどのアジア諸国から輸入した猫皮が増加しています。

犬皮に関しても国産のものはほとんどなく、出回っている犬皮の多くは海外からの輸入品です。

ただし、現在は犬猫のどちらの皮についても、動物愛護の観点から輸入品の入手も困難になっています。

まとめ

三味線の皮には猫皮、犬皮、カンガルー皮、合成皮などの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

それらの中でも、三味線発展の礎を築いてきたと言われる「猫皮」は、細棹や中棹の三味線に使われることが多い素材です。

一方で、猫皮よりも厚みがある「犬皮」は太棹の三味線と相性がよく、犬皮を用いた三味線は最高級品といわれています。

三味線は皮の種類によって音の響きが異なるため、皮の違いによる音の響きに注目して演奏を楽しむのもよいでしょう。

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