バイオリンの正しいメンテナンス方法・保管方法

バイオリンをはじめとした弦楽器はほかの楽器に比べて、環境の変化にとても敏感な楽器です。そのため、使用前と使用後に加えて、定期的にメンテナンスが必要となります。日本は四季があり温度や湿度の変化が年間を通して大きいため、バイオリンの保管方法にも気をつけなければなりません。

当記事では、バイオリンの正しいメンテナンス方法や保管方法について詳しく解説します。バイオリンのメンテナンス方法について知りたい方は、ぜひお役立てください。

1. バイオリン本体のメンテナンス方法

バイオリン本体のメンテナンス方法

  • ✔︎弾き続けることで、定期的に交換が必要な部品が劣化する
  • ✔︎環境や状況によりパーツが変化する箇所がある
  • ✔︎弾く際に発生する振動により、パーツのネジの緩みから雑音が発生する場合がある

バイオリン本体のメンテナンスが必要な理由は、上記の3つがあります。

バイオリンは定期的に点検することで、きれいな音色を奏でることができます。バイオリンを演奏したときの感覚に違和感があったときも、早めに対応すれば悪化を未然に防ぐことも可能です。バイオリンは繊細な楽器であるため、調整や点検は専門店にお願いしましょう。

以下では、バイオリンの日常的なメンテナンスと保管方法について解説します。

日常のメンテナンス

日常のメンテナンスでは、ガーゼやクロスなどでバイオリンを乾拭きします。布に刺繍など硬い部分があると、拭いているうちにバイオリンを傷つける可能性があるため拭き取り方に注意してください。

バイオリンの弓につけた松脂は演奏後すぐに拭くと簡単に落ちますが、時間が経過すると松脂が固まり拭き取りにくくなります。松脂を落とそうとバイオリンを強く擦ると、バイオリンのニスが剥げて劣化の原因になります。バイオリンを使用したらすぐに松脂を拭き取りましょう。

手汗や手垢によりバイオリンの弦や指板、あご当てが汚れることがあります。特に弦は少し弾いただけで手垢がつきやすい部分です。弦が汚れると音が影響を受けます。弦と指板は、エタノールを少しつけたティッシュで拭くと汚れが落としましょう。胴体にエタノールが付着するとニスや塗料が剥がれる可能性があるので、注意して拭いてください。

定期的にバイオリンケース内の砂やホコリも吸い取りましょう。掃除機の強い吸引力でケース内の汚れを吸うと、バイオリンの内張の布が破損してしまう場合があります。掃除機を弱めのパワーで調節した状態で、中の汚れを取ることがポイントです。

バイオリンの正しい保管方法・湿気対策

バイオリンを弾き終えた後、ケースの中に収納し保管しましょう。ただし、長期間バイオリンを弾く予定がない場合は弦を少し緩めてください。

バイオリンは繊細な楽器のため、高温多湿の環境に気をつけて保存しなければなりません。環境によりバイオリンのニスや接着剤が高温湿度で溶け、指板や横板などが剥がれる可能性があるためです。保管するときの温度は18〜28℃、湿度は40〜65%になるよう維持してください。直射日光を避け、夏場の窓辺や夏場の車内に放置しないようにしましょう。

2. バイオリンの弓のメンテナンス方法

バイオリンの弓のメンテナンス方法

バイオリンを弾かない場合は、弓を緩めて保管してください。弓を張ったままの状態にし続けると、弓の反りがなくなる原因になります。反りがなくなることでバイオリンにうまく力をかけられず、音が出にくくなります。また、弓の毛に手脂がつくことで松脂がのりにくくなるため、日頃から指に弓の毛がつかないように気をつけましょう。

弓の毛は消耗品のため、半年に一度交換する必要があります。弓の毛に松脂がのりにくくなった場合や、滑るような感じがした場合も交換してください。

毛の張替えは難しいため、弦楽器の楽器店に依頼し弓の毛の交換を依頼しましょう。毛替えには技術の差が出るため、自分に合った楽器店を見つけることが大事です。

3.バイオリンのメンテナンスでよくある疑問

バイオリンのメンテナンスでよくある疑問

定期的にバイオリンをメンテナンスに出しパーツ交換することで、バイオリンの音色や弾き心地がよくなります。

たとえば、弓の毛は音色や弾き心地への影響が大きいパーツです。弓の毛が同じでも、職人の弓の張り方によって音色や引き加減が異なります。松脂を変えるだけでも弓を交換したくらいに音が変化することもあります。バイオリンのパーツに違和感を覚えたら、交換を検討しましょう。

以下では、バイオリンのメンテナンスでよくある疑問と解決方法を解説します。

駒が傾いていたらどうすればいい?

駒の傾きを自力で調整したい場合は、バイオリンを横から確認して駒が垂直になっているかを確認します。垂直でない場合は、弦を少し緩めて正常な状態になるように駒をゆっくり動かして調整します。駒を動かしたら、垂直になっているかもう一度確認します。傾きが直るまで作業を繰り返してください。

調弦してもすぐに駒が傾いてしまう場合は、駒が変形している可能性があります。弦楽器の専門店や修理工房に見てもらいましょう。

ペグが緩んで止まらない場合はどうすればいい?

バイオリンが乾燥することで木が縮み、ペグが緩むことで止まらなくなります。ペグが止まらなくなったときはペグを緩めて弦を抜き取り、ペグにチョークを塗ると緩みが止まりやすくなります。チョークを塗る際はペグ全体に塗るのではなく、ペグボックスとの接地面を塗るようにしてください。

チョークを塗っても改善されない場合は専門店へ相談しましょう。

弓毛に松脂を塗る頻度は?

弓毛に松脂を塗る頻度は使用頻度によって変化します。下表は、バイオリンの使用頻度に合わせた、松脂を塗る量の目安です。

オーケストラに所属して定期的に数時間演奏する演奏前に1~2往復塗る
毎日2時間以上練習する演奏前に1~2往復塗る
数日に1回、1時間程練習する1週間に1度1~2往復塗る
1週間に1~2度程、30分程度練習する2~3週間に1度1~2往復塗る

塗った後に弓が滑るようになったり弓の引っ掛かりが悪くなったりなど、弾き心地が悪くなった場合は布で松脂を拭きましょう。音合わせをしながら松脂を少しずつ調整してください。

弓の毛に松脂を塗った際は弓が傷つき破損する原因につながるため、弓の毛を指ではじかないようにしましょう。

バイオリンの弦の張り方について詳しくはこちら↓↓
バイオリンの弦の張り方を徹底解説!交換タイミングはいつ?

弦の交換頻度・タイミングは?

バイオリンの弦を交換するタイミングはさまざまです。

弦を交換する1つのタイミングとして、弦の色の変化があります。弦を長期間張り続けていると、手汗や松脂により弦が錆びて色が変わるためです。また弦がほつれてきた場合も交換のタイミングです。弦が劣化して演奏時やチューニング時に切れる可能性もあるため、ほつれている弦を見つけたら早めに交換しましょう。弦を交換してから3か月以上経っていて、弾き心地や音が変わったと感じたときも交換のタイミングとなります。

バイオリンの弦が劣化すると音程が正確に取りにくくなったり、音色に張りがなくなったりする場合があります。弦は劣化に関わらず突然切れることもあるため、普段から予備の弦を用意するとよいでしょう。

バイオリンの弦の張り方について詳しくはこちら↓↓
バイオリンの弦の張り方を徹底解説!交換タイミングはいつ?

魂柱が倒れた場合はどうすればいい?

バイオリンの弦を張ることで駒や楽器にかかる圧力は30kg程度と言われています。内部の魂柱が倒れた場合、表板への圧力が支えられず板が割れる恐れがあります。そのため、魂柱が倒れたときは魂柱だけでなく、他の部分や内部のヒビ、剥がれなど細かく確認しましょう。

魂柱が倒れた場合、弦をしっかり緩めて駒を外す必要があります。駒やテールピースによりバイオリンが割れないように、ハンカチで挟みながら緩めましょう。無理に直そうとするとバイオリンに傷をつける恐れがあるため、魂柱が倒れて対処ができない場合は、早めに弦楽器の専門店へ相談するのがおすすめです。

まとめ

バイオリンは定期的にメンテナンスをすることで、綺麗な音色を奏でられます。

日常的なメンテナンスではガーゼやクロスなどでバイオリンについた松脂や手汗、手垢を拭き取ります。バイオリンケースの中のホコリや砂も定期的に吸い取りましょう。またバイオリンを保管する際は温度と湿度に気をつけます。

バイオリンのパーツが傾いたり緩んでいたり、倒れたりした際に対処が難しい場合は、バイオリンを動かさず速やかに専門店へ持っていきましょう。

自力で無理に動かすと、バイオリンが壊れる恐れもあるため注意が必要です。

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