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シャネルの歴史を語るとき、創業者ココ・シャネルの人生や業績に触れることは欠かせません。
ココ・シャネル(本名ガブリエル・シャネル)は1883年生まれ。仕立て屋で働いていた若きガブリエルは舞台に立つことを夢見てキャバレーで歌手をしていましたが、そのとき彼女の持ち歌のひとつ『ココリコ』から“ココ”という愛称が生まれたという逸話があります。

その後、ココは舞台の夢をあきらめ、1910年にパリで帽子ショップをオープンしました。
当時は華やかな装飾を施した帽子がトレンドでしたが、ココはあえてシンプルなデザインの帽子を売り出して注目を集め、人気を得ます。
ココ・シャネルはその人生において、今あるトレンドや伝統を洗練されたセンスによって覆すファッションの革新をもたらしましたが、その原点がここにあるといえるでしょう。

1916年には、男性の下着に使われていた伸縮性のあるジャージー素材を用いて女性のボディラインを美しく際立たせるジャージードレスを発表。さらに1926年には、喪服でしかあり得なかった黒一色のドレスをファッションアイテムとして提案する「リトル・ブラック・ドレス」を発表します。

第二次世界大戦の戦火が世界を覆う中、戦時中から戦後にかけて、ココ・シャネルは「対独協力者」のひとりであったことから(ナチス諜報機関のもとでスパイ活動を行っていたそうです)しばしば告発を受けたりスイスへ逃れたりと苦しい時期を過ごしますが、1954年に返り咲きを果たします。
当時は男性用スーツなどでしか使われていなかったツイードを、女性用スーツの素材として活用。『シャネルスーツ』と呼ばれた女性用のツイードスーツは、戦後の新しい時代の女性像を象徴するアイテムとして迎えられます。
これをきっかけにココ・シャネルは完全復活を遂げ、翌年にはシャネルの代名詞的なアイテム『マトラッセ』の原型となるショルダーバッグ『2.55』を発表します。
現代からは考えられないことですが、当時は「女性がショルダーバッグを使用するのは品が悪い」という価値観が存在し、いわゆる“良識派”の人々から『2.25』は白眼視されていましたが、世の若い女性たちは、その先進的なデザインと、バッグを肩にかけることで両手を自由に使えるという利便性の高さからナチュラルに受け入れ、人気商品となりました。

そんなファッションの革新者であったココ・シャネルは、1971年に死去。
その後、ブランドはしばらく低迷期を迎えることになりましたが、優れたデザイナーで写真家でもあったカール・ラガーフェルドの活躍でスランプを脱し、1980年代に再び完全復活を果たし、現在もなお、シンプルでありながらエレガントな洋服の数々でファッションに関心を持つ人々を魅了しています。